2011年 4月27日の新作昔話
火鉢の餅
和尚と小僧の笑い話
むかしむかし、ある山寺に、和尚さんととんちのきく小僧さんがいました。
ある日の事、村のお百姓さんが、お寺にお餅を持って来ました。
「和尚さま、これを、仏さまにお供えください」
「これはこれは、ありがたい。さっそく、仏さまに供えましょう」
お餅が大好きな和尚さんは、大喜びです。
そしてこのお餅を一人で全部食べようと思った和尚さんは、しばらくすると小僧さんを呼んで言いました。
「今日はいい天気だから、馬屋の掃除をしてきておくれ」
「・・・はい」
馬屋の掃除は、昨日したばかりです。
おかしいと思った小僧さんは、
(ははーん。これはきっと、いつもの様に一人でお餅を食べるつもりだな。よし、確かめてやる)
と、裏口から中の様子をのぞいて見ると、思った通り、和尚さんは火鉢の上にあみをのせて、お餅を焼いていたのです。
(やっぱりだ。それにしても、おいしそうなお餅だな。食べたいな・・・。そうだ、良い方法があるぞ!)
名案を思いついた小僧さんは、馬屋の方に駆け出しました。
その頃、お餅の焼けるいいにおいに、和尚さんはニコニコ顔です。
「しめしめ。これで安心じゃわい。小僧がいては、安心して餅も食えんからな。さあ、そろそろ焼けてきたぞ。うーん。うまそうなにおいじゃ」
すると突然、小僧さんの声がしました。
「和尚さま、大変です! 大変です!」
「なんじゃ、騒々しい。ちょっと待て」
和尚さんは、あわててお餅を灰の中に隠しました。
そこへ小僧さんが、勢いよく飛び込んで来ました。
「どうした? そんなにあわてて」
「はい。馬小屋の掃除をしようと思って、馬を馬小屋から引き出して庭のカキの木に」
そう言いながら小僧は、火ばしを火鉢の灰の中にブスリと突き立てました。
「カキの木に、馬をつなぎました」
そして火ばしを持ち上げると、火ばしの先にはお餅が突き刺さっています。
「あれ、お餅が、こんなところに?」
「ああ、それはその・・・。馬小屋の掃除がすんだら、お前にも食べさせてやろうと思ってな」
和尚さんは、仕方なしに言いました。
「そうですか。ありがとうございます。・・・そうそう、ところが馬は何に驚いたのか、つないだつなを切って、パッパッと駆け出しました」
小僧さんはもう一本の火ばしを取って、パッパッと灰の中に突き立てました。
するとこの火ばしにも、またまたたくさんのお餅が突き刺さりました。
「あれ、あれ、こんなにたくさん、ありがとうございます。では、いただきまーす!」
小僧さんはおいしそうに、パクパクとお餅をたいらげました。
「それで、逃げた馬はどうした?」
「それがまだ、逃げたままです」
「何じゃと、こりゃ大変じゃ! 餅を食われた上に、馬にまで逃げられてはたまらん!」
和尚さんは、あわてて飛び出していき、小僧はさんそのすきにお餅を全部食べてしまいました。
おしまい
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