2011年 6月22日の新作昔話
そば喰い像
京都府の民話
鎌倉時代の初め頃、浄土真宗(じょうどしんしゅう)を開いた親鸞(しんらん)と言う偉いお坊さんがいたのですが、これはその親鸞が、範宴(はんえん)という名前で修業をしていた頃のお話しです。
その頃の範宴は他の若いお坊さんたちと一緒に、比叡山(ひえいざん)にこもって修業をつんでいました。
でも、いくら修行をしても、仏心(ぶっしん)を会得(えとく)する事が出来ません。
「まだ、修行が足りぬのか」
なやんだ範宴は、都にある六角堂(ろっかくどう)と言う所へ百日参籠(ひゃくにちさんろう)をする事を思いつきました。
その晩から範宴は誰にも知られないようにと、みんなが寝た後でこっそり山を下り、みんながまだ目を覚まさない明け方のうちに帰ってくるという、つらい修業を始めたのです。
初めのうちは何事もなく過ぎていきましたが、やがて仲間のお坊さんたちの間で、範宴の朝帰りがうわさされるようになりました。
このうわさは、偉いお坊さんたちの耳にも入りました。
そこで偉いお坊さんは、ある夜突然にみんなをお堂に集合させると、一人一人順番に名前を呼び始めたのです。
そしてついに、範宴の番がまわってきました。
「範宴!」
お坊さんの重い声がお堂に響くと、不思議な事にいないはずの範宴が答えました。
「はい」
その声は、確かに範宴の声です。
偉いお坊さんも仲間のお坊さんたちも、その声を聞いて胸をなでおろしました。
(よかった。ただのうわさであったか)
安心したみんなは、その後で出された夜食のおそばを食べると、それぞれの部屋に帰っていきました。
ところが翌朝、早起きをした一人のお坊さんが、朝帰りの範宴とばったり出会ってしまったのです。
「本物の範宴は、今帰ってきた。すると昨日返事をしてそばを食べたのは?」
仲間のお坊さんたちは、昨日の返事をしてそばを食べた者を探しました。
そして見つけたのが、範宴が彫った彼そっくりの像だったのです。
不思議な事にその像の口元には、おそばの青ねぎがついていたのです。
この範宴の代わりに返事をしておそばを食べた身代わり像は、その後、そば喰い像と呼ばれるようになりました。
おしまい
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