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2011年 7月8日の新作昔話

親切な山姥の仕返し

親切な山姥の仕返し

 むかしむかし、とても心優しい娘が、藤の木の皮をはいで糸を作る仕事をしていました。
 するとそこへ山から来た山姥(やまんば)が現れて、娘が指を真っ黒にしながら糸をつむいでいるのを見ると、
「どれ、わしに貸してみろ」
と、娘から藤の木を受け取り、するどい爪でばりばりと皮をはいで、左手にぐるぐると巻いていきました。
 それから山姥はたき火に左手をつっこんで、藤の皮に火をつけたのです。
(熱くないのかしら?)
 娘が驚いて見ていると、山姥は黒こげになった藤の皮を口にふくんで、勢いよくプーッと吹き出しました。
 すると美しい糸が、滝のように山姥の口から出てきたのです。
「さあ、この糸はお前にやろう」
 娘はとても喜び、お礼に自分のお昼ご飯のにぎり飯を山姥にあげました。
 すると山姥も喜んで、
「にぎり飯なんて、何年ぶりだろう。明日も来てやるから、藤の木をたんと用意しておけよ」
と、山へ帰っていきました。

 その日の夜、娘は両親に親切な山姥の話をしました。
 すると両親は恐ろしそうに震えて、
「山姥が、親切なはずがねえ。きっとお前をだまして、山に連れて行くつもりじゃ」
と、言うのです。
「あの山姥さんは、とてもいい人よ」
 娘は何度も両親を説得しましたが、両親は信じようとはしませんでした。

 次の日、約束通り山姥がやってきたので、両親は娘を家の中に隠すと、作り笑顔でこう言いました。
「これはこれは、山姥どの。
 よく、参られました。
 昨日は娘がお世話になり、ありがとうございました。
 これは、お礼のしるしです。
 どうぞ、たきたてのにぎり飯を召し上がってください」
 そう言って山姥ににぎり飯をあげたのですが、けれどそのにぎり飯には梅干しの代りに真っ赤に焼いた石を入れていたのです。
 にぎり飯をパクリと飲み込んだ山姥は、
「熱い! 熱い!」
と、のどやお腹を押さえて苦しみました。
 すると両親が親切そうな顔をして、
「おや? たきたてのご飯で、やけどをなされたか。ならば、このお水をお飲みなさい」
と、今度は油を飲ませたので、山姥のお腹の中は火事になって、山姥はそのまま焼け死んでしまいました。
 この事を知った娘は、
「親切な山姥さんに、なんてひどい事を。こんな事をしては、きっとバチがあたってしまうわ」
と、泣きながら死んだ山姥に謝りました。
 でも両親は、
「山姥をやっつけた! これで娘が、さらわれずにすんだ!」
と、喜びながら、山姥の死体を庭に埋めてしまったのです。

 さて、それから間もなく、今まで元気だった両親が病気になって死んでしまいました。
 残された娘は大丈夫でしたが、娘は死んだ両親と山姥のお葬式をすると、村を離れてどこかへ行ってしまったそうです。

おしまい

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