2011年 7月25日の新作昔話
嫁になった雪女
山形県の民話
むかしむかし、ある山奥で、若者が一人で暮らしていました。
ある吹雪の夜、家に帰ってきた若者が、ぬれた着物を囲炉裏(いろり)で乾かしていると、
「・・・今晩は。・・・今晩は」
と、美しい女の人が訪ねて来たのです。
若者が家に入れてあげると、女の人は、
「道に迷ったので、今夜一晩、泊めて欲しいのです」
と、言うのです。
「それは、お困りでしょう。何もありませんが、遠慮なく泊まっていきなさい」
若者は親切に囲炉裏の火を大きくしてやりましたが、女の人はそれをとても暑がり、囲炉裏には近づこうとしませんでした。
さて、翌朝になりましたが、女の人はどこに行くわけでもなく、ご飯の支度をしたり掃除したりと一生懸命に働き、そのまま若者の嫁さんになったのです。
夫婦になった二人は、とても幸せな毎日を過ごしました。
けれど春が近づいて暖かい日が多くなると、嫁さんはだんだん元気がなくなってきました。
「なあ、春になってもっと暖かくなったら、きっとお前の病気も良くなるだろう。それまで、頑張れよ」
若者はそう言って、元気のない嫁さんをはげましました。
そんなある日、若者が山の仕事から帰ってくると、家にいるはずの嫁さんがどこにもいないのです。
「おーい、どこへ行ったー!?」
若者が家中を探すと、嫁さんが残した置き手紙が見つかりました。
そしてその置き手紙には、こう書かれていたのです。
《今まで、お世話になりました。
わたしは雪女で、この夏には命が尽きます。
そこで、生きている間に子どもを宿したいと、あなたの妻になりました。
あなたのおかげで、無事に娘を宿すことが出来ました。
娘を産んで、命が尽きるところをあなたに見られたくはないので、わたしは山へ帰ります。
さようなら》
若者はすぐに山へ行き、毎日毎日嫁さんをさがしましたが、嫁さんを見つける事は出来なかったそうです。
おしまい
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