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2011年 8月12日の新作昔話

首なし幽霊

首なし幽霊

 むかしむかし、一人の酔っぱらいが、大声で歌を歌いながら夜道を歩いていました。
♪ああ、良い月だ、良い月だ
♪昨日も今日も、良い月だ
♪きっと明日も、良い月だ
 そこへ、田舎から来た侍が通りかかりました。
「おい待て。ちょっと道をたずねるが」
 侍が、いばった口調で言ったので、頭にカチンときた酔っぱらいが侍にどなりつけました。
「なんだこら! おい、待てとはなんだ! 人にものを聞くなら、もっと丁寧に言え! この田舎侍めが」
「何を、何と無礼な!」
 腹を立てた侍は、いきなり刀を抜いて、目にもとまらぬ早わざで酔っぱらいの首をはねたのです。
 侍はパチンと刀をさやにおさめて、そのまま後もふりむかずに立ちさっていきました。
「ふん、腰抜けの田舎侍め。斬る真似だけか」
 首を斬られた酔っぱらいは、ぶつぶつ言いながら歩いていきました。
 ところがどういうわけか、すぐに顔が横を向いてしまいます。
「おかしいな? ちゃんと前を見ているのに、どうして横を向くのだろう?」
 酔っぱらいは自分の顔を両手でまっすぐ前に向けますが、しばらくすると、また顔が横を向いてしまいます。
「ちと、飲み過ぎたかな?」
 そのうちに酔っぱらいは石につまずいて、前へ倒れそうになりました。
 するとそのひょうしに、頭ががくんと前へ傾きました。
「おや?」
 酔っぱらいが思わず首に手をやると、なんと首が皮一枚でつながっているだけです。
「うわあ、やられた!」
 酔っぱらいは、ようやく首を斬られた事に気づきました。
「大変だ! このままでは、死んでしまう!」
 酔っぱらいは両手で首をおさえて、医者の家にむかって走り出しました。
 その時、
「火事だ!」
と、言う声がして、あちこちから人が飛び出してきました。
 見ると、むこうの空がまっ赤です。
「火事はどこだ!?」
「あっちだ!!」
 みるみるうちに弥次馬(やじうま)が集まり、火事場の方へ駆け出しました。
 ぼやぼやしていたら突き飛ばされて、首をなくしてしまうかもしれません。
 そこで酔っぱらいは、ひょいと首をはずすと、両手にかかえて走り出しました。
「はい、ごめんよ、ごめんよ」
 これを見た弥次馬たちは、びっくりして立ちどまり、
「く、く、首なし幽霊!」
と、さけんで、火事場にかけつけるのも忘れてしまったそうです。

おしまい

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