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2011年 8月26日の新作昔話

やろか水

やろか水

 むかしむかし、とても激しい雨が降る夜の事。
 村人が土手の様子を見に行くと、雨や川の音にまじって不気味な声が向こう岸から聞こえてきました。
「・・・やろうか? ・・・やろうか?」
 村人は水の音かとも思いましたが、よく聞いてみると、それは人間の声ではっきりと『やろうか?』と言っているのです。
 もちろん、周りには誰もいません。
「・・・やろうか? ・・・やろうか?」
 村人は怖くなって、走って村に逃げ帰りました。

 そしてその村人が、さっきの話を村の長老にすると、
「それはおそらく、妖怪の仕業だろう。
 うかつに返事をすると、とんでもない事になるから、決して返事をしてはならねえぞ」
と、言うのでした。
 このうわさはすぐに広まって、村人たちは誰も川に近づこうとはしませんでした。

 そんなある日、村の若者が酒に酔った勢いで、
「へん! 妖怪が、何だってんだ! だいたい、『やろうか?』と言っているのなら、何かは知らねえが、ありがたくもらえばいいんだ!」
と、土手へと行ったのです。
 そして、
「・・・やろうか? ・・・やろうか?」
と、不気味な声のする方に向かって、
「やい、『やろうか?』って言うのなら、おれさまがもらってやるから、早くよこせ!」
と、叫んだのです。
 すると川上から、
 どどっー!
と、地響きがして、まもなく湖の水をひっくりかえしたような鉄砲水が流れて来たのです。
「うわぁーーー!」
 返事をした若者はもちろん、他にも多くの村人がその鉄砲水に飲み込まれて、おぼれ死んだと言うことです。

おしまい

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