2011年 8月29日の新作昔話
彦助とカッパ
山形県の民話
むかしむかし、最上川(もがみがわ)にはカッパが住んでいて、川魚や畑のキュウリを食べていました。
しかし川魚やキュウリにあきてしまい、やがてカッパは人間を襲って食べるようになったのです。
そして人間の肉の中でも特に大好物なのが、お尻の奥にあると言われる《尻子玉》でした。
ある日の事、カッパは今日も尻子玉を食べたいと思い、最上川のほとりで魚を取って暮らしている彦助という若者の家に忍び込みました。
そして寝ている彦助のお尻にそっと手を伸ばしたのですが、カッパの手の冷たさに目を覚ました彦助が、
「冷たい!」
と、飛び起きてしまったので、カッパは一目散に川へと逃げて行ったのです。
「カッパめ! おれの尻子玉を食うつもりだな。
用心して、ふんどしをきつく締めておいてよかったよ。
しかしカッパは執念深いから、また来るだろう。
さて、どうしたものだろう?
・・・そうだ!
」
ある名案を思いついた彦助は、カッパをこらしめるある物を探しに出かけてました。
その夜、彦助の思った通り、カッパが再び彦助の家に忍び込んできたのです。
昨日は、尻子玉を取ろうと手を伸ばして失敗したカッパは、
(手で取るよりも、直接口で、尻の肉ごと尻子玉を食ってやれ)
と、彦助のふとんに潜り込むと、彦助のお尻にガブリと力一杯噛みついたのです。
すると、
「ウギャーッ!」
と、彦助ではなくカッパが悲鳴を上げて、一目散に川へと逃げて行きました。
実は彦助は村のお地蔵さまを借りてきて、それに自分の服を着せてふとんに寝かせておいたのです。
そうとは知らないカッパは石のお地蔵さまに思いっきり噛みついて、口を大怪我したのです。
「あいたたた! この口では、もう何も食う事が出来ん」
これにこりた最上川のカッパは、二度と姿を見せなかったそうです。
おしまい
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