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2011年 10月3日の新作昔話

ほら吹き男爵 目からの火花で鉄砲を

ほら吹き男爵 目からの火花で鉄砲を
ビュルガーの童話

 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは、「ほらふき男爵」とよばれておる。
 今日も、わがはいの冒険話を聞かせてやろう。

 ある朝の事だ、ベッドから起きあがったわがはいは、部屋の空気を入れかえようと窓を開けて、
「おおっ、こいつはすごい!」
と、思わずうなった。
 窓から見える近くの湖に、数え切れないほどのカモの群れが集まっていたのだ。
「よし、久しぶりにカモ狩りといくか」
 わがはいは鉄砲を取ると、飛ぶように階段を駆け下りたが、あまりにも急いでいたので、
 ゴチーン!
と、戸口の柱に、おでこをしたたかぶつけてしまった。
「あいたたたたっ」
 あまりの痛さに、目から火花が出たぞ。

 さて、池のほとりに着いたわがはいは、さっそくカモに狙いをつけたが、ここである事に気がついた。
「しまった! 鉄砲の発火石がない!」
 わがはいにしては、なんというミスだ。
 おそらく、さっき柱にぶつかった時に、どこかへ飛ばしてしまったのだろう。
「こいつは、弱ったな」
 いくら、わがはいが鉄砲の名人とはいえ、発火石がなくてはどうにもならない。
 もちろん、今さら家へ取りに帰る時間もない。
「どうしたものか。どこかに、わずかでも火があれば・・・」
 その瞬間、わがはいは、さっき目から飛び出した火花の事を思い出した。
「これだ!」
 わがはいはカモに狙いをつけると、げんこつで自分のおでこを力いっぱいなぐりつけた。
 そして目から飛び出す火花を利用して、わがはいは鉄砲を撃ったのだ。
 ズドーン!
 ズドーン!
 そのたびに、わがはいのおでこにはたんこぶが増えたが、おかげで十六羽のカモを仕留める事が出来たのだ。

 利用できる物は、何でも利用する。
 これが、今日の教訓だ。

 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。

おしまい

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