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2011年 10月5日の新作昔話

ほら吹き男爵 キツネを殺さずに、毛皮を手に入れる方法

ほら吹き男爵 キツネを殺さずに、毛皮を手に入れる方法
ビュルガーの童話

 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは、「ほらふき男爵」とよばれておる。
 今日も、わがはいの冒険話を聞かせてやろう。

 ある時、わがはいはロシアの大きな森で、毛並みの見事なキツネに出くわした事がある。
 それを見たわがはいは、故国に残してきた妻が、かねがねキツネのえり巻きを欲しがっていた事を思い出した。
「よーし、こいつを仕留めて、妻への土産にしよう」
 わがはいは妻の喜ぶ顔を考えながら、鉄砲の引き金に指をかけたが、
「いや、待てよ。これほど立派な毛皮に、鉄砲の玉で穴を開けるのはもったいないな」
と、思い直した。
 そしてわがはいは、鉄砲から玉を抜いて、その代わりに一本のくぎを詰めた。
 そしてキツネの尻尾を狙って、
 ズドーン!
と、撃ち放ち、キツネの尻尾を木の幹にくぎ付けにしたのだ。
 そしてわがはいは、ゆうゆうとキツネに近寄って、キツネの顔にナイフで十の字型の傷をつけたのだ。

 どうして、こんな事をするかだって?
 まあ聞きなさい、これからが、わがはいの頭の良いところだ。
 わがはいは食料袋から鶏肉を取り出すと、棒の先に突き刺して、
「さあ、キツネくん。遠慮なく、食いたまえ」
と、キツネの鼻先一メートルぐらいのところに、鶏肉を差し出したのだ。
 こうすると、肉を食べたいけれど、口が届かない。
 そのもどかしさにキツネはイライラしていたが、そのうちにたまらなくなったのか、
 コーン!
と、ひと声なくと、キツネの顔の傷口から毛のない裸のキツネが飛び出して、肉にかぶりついたのだ。
 もちろんあとには、傷一つない美しい毛皮だけが残ったというわけだ。
 毛皮が無くなり裸になったキツネには、いずれ元通りの毛皮が生えるであろう。
 こうしてわがはいは、キツネを殺す事なく毛皮を手に入れたのである。

 命は大切な物、殺さずにすむのなら、出来る限り殺さない。
 これが、今日の教訓だ。

 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。

おしまい

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