2011年 10月24日の新作昔話
ほら吹き男爵 風犬のウサギ狩り
ビュルガーの童話
わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
みんなからは、「ほらふき男爵」とよばれておる。
今日も、わがはいの冒険話を聞かせてやろう。
以前、愛犬ダイアナの話をしたが、実はもう一匹、『風犬』と呼んでいる愛犬がいる。
この風犬はスタイルは悪いが、おそろしく足が速いのだ。
なぜスタイルが悪いかというと、こいつは得意になっていつも走り続けたので、しまいには足がすりへってしまったのだ。
そんなわけで年をとってからは、あなぐま探し専門になったがな。
さて、このメスの風犬が、まだ血気盛んな頃の事だ。
わがはいの狩りのお供をして、風犬はウサギを追いかけていた。
その頃、風犬はお腹に子どもを身ごもっていたので、
「もう、やめておけ。お前に、もしもの事があったら大変だ」
と、わがはいは止めたのだが、走る事が生き甲斐の風犬は言うことを聞かなかった。
もしかすると、仲間の犬が八本足のウサギを追い出してほめられたから、負けずに九本足のウサギでも捕まえようと思ったのかもしれない。
しかし、そんなウサギがいるわけがないとあきらめたか、風犬は、ばかに太ったウサギを追いかけた。
やがて追いかけながら、草むらの中に入ったとたん、
キャン、キャン、キャン!
ひどく弱々しい、犬の鳴き声が聞こえてくるではないか。
さては追い詰められたウサギの反撃にあい、風犬が悲鳴をあげているのかなと思ったが、その泣き声は、どうも一匹のものではない。
「これは、おかしいぞ?」
わがはいが、さっそく行ってみると、
「なんと、これは・・・」
犬とウサギは、追いかけ追いかけられながら、お互いに子どもを産んでいたのだ。
そればかりか同じ数の犬とウサギの赤ん坊が、これまた親たちに負けずに追っかけごっこをしていたのだ。
赤ん坊とはいえ、さすがは風犬の血を引く犬たちだ。
たちまち、それぞれウサギの赤ん坊を捕まえた。
おかげでわがはいは親ウサギの他に、三匹の子ウサギと、三匹の子犬を手に入れることが出来たのだ。
教訓ではないが、足の速い親からは、足の速い子が生まれるのだ。
では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。
おしまい
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