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2011年 12月5日の新作昔話

ほら吹き男爵 沼に落ちかけた馬

ほら吹き男爵 沼に落ちかけた馬
ビュルガーの童話

 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは、『ほらふき男爵』とよばれておる。
 今日も、わがはいの冒険話を聞かせてやろう。

 ある戦争に参加した時、わがはいは馬で沼を飛びこそうとした。
 ところが飛びあがってから、その沼がばかに広い事に気がつき、あわてて空中で、
「まわれ右!」
と、自分で号令をかけて引き返した。
 そして今度は、さっきよりも勢いをつけて、
「えいっ!」
と、空高く飛んだ。
 ところが、それでも駄目だった。
 普段なら、わがはいの馬術で簡単に飛べただろうが、この時、わがはいは着ていた甲冑(かっちゅう)の重さを計算に入れていなかったのだ。
 ああ、なんたる不覚。
 わがはいはそのまま、馬もろとも沼に落ちかかった。
 しかもこの沼は、おそろしい底なし沼だ。
 甲冑姿で落ちたら、絶対にはいあがる事は出来ない。
「えい、こうなれば!」
 わがはいは馬の腹を両ひざにはさむと、自分で自分のえり首をぐっとつかみあげて、馬もろとも沼から引っ張りあげて命拾いをしたのだ。
 自分で言うのもなんだが、わがはいの怪力は大したものだ。

 今日の教訓は、『甲冑は、予想以上に重い』だ。
 きみたちも甲冑を着る事があったら、甲冑の重さには十分注意するように。

 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。

おしまい

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