2012年 1月13日の新作昔話
船付き観音(ふなつきかんのん)
岐阜県の民話
むかしむかし、大雨が降る度に川が氾濫(はんらん)して、田んぼも畑も水びたしになってしまう村がありました。
今日もひどい大雨で、村人たちは水につかった田んぼや畑をながめながら、ため息をつきました。
「まったく、いつになったら晴れてくれるのやら。このままでは、稲も大根も駄目になってしまうぞ」
「そうだな。とにかく雨が止んでくれないと、・・・おや?」
見ていると、どこから流れてきたのか、一そうの小船が川を漂っていました。
「おい! あの船、なにか光っていないか?」
「ああ、確かに光っとる」
村人たちがその小船に近づいてみると、何と小船の中に金色に光り輝く観音さまがいたのです。
村人たちは思わず両手を合わせて、その場にひれ伏しました。
「観音さまが、おいでになる」
「もったいない、もったいない」
「もしかすると観音さまは、わしらを助けに来て下さったのかもしれんぞ」
「そうだ、きっとそうに違いない。よし、庄屋さまの屋敷にお運びするぞ」
そこで村人たちが観音さまを小船から運び出すと、その観音さまの光が空の黒雲を切り裂いて、瞬く間に雨があがったのです。
「おおっ、雨があがった」
「やはり観音さまは、わしらを助けに来て下さったのだ」
観音さまが運び込まれた庄屋さんは、さっそく観音堂を建立して観音さまをおまつりしました。
不思議な事に、この観音さまの手には水かきが付いていました。
そこで船乗りや川で仕事をする人たちは、この観音さまを水の神さまとしてお参りするようになったそうです。
おしまい