2012年 2月10日の新作昔話
屁こき夫婦
むかしむかし、あるところに、とても貧乏な夫婦が住んでいました。
夫婦は貧乏で食べる物がないので、他の家が捨てたイモの尻尾ばかりを食べています。
そのために二人は、いつも大きなおならをしていました。
「お前、見てみろ。さっきから、屁が止まらんわい。ほれ、ぴーひゃらぴー」
「あらあら、あなたのおならは、まるでお祭りの笛みたいですね。ぴーひゃらぴー」
「そう言うお前も、お祭りの笛みたいだぞ。ぴーひゃらぴー」
「ほんとうね。わたしのおならも、お祭りの笛みたいだわ。ぴーひゃらぴー」
ある日の事、お城の殿さまが領地を見にやって来ました。
村人たちはみんなひれ伏して殿さまが通り過ぎるのを待っているのですが、こんな時でも夫婦のおならは止まりません。
♪ぴーひゃらぴー
♪ぴーひゃらぴー
すると、その音に気づいた殿さまが、夫婦に近寄ってきて尋ねました。
「これ。さっきから『♪ぴーひゃらぴー』と鳴っている、不思議な音は何の音じゃ?」
「はい。これは、わしらの屁の音でして。ぴーひゃらぴー」
「屁? 屁とな? ・・・それは面白い。よければ、もっとやってくれんか?」
殿さまの言葉に男は前口上をすると、お尻をまくって言いました。
「はい、それでは失礼して。
わしらは日本一の、屁こき夫婦でございます。
ゆかいな屁を、ひってごらんにいれますぞ。
あっ、そーれ!」
♪ぴー、ぴー、ぴーひゃらぴー
♪ぴーひゃらぴー ぷっ、ぷっ、ぷっ
♪ぴー、ぴー、ぴーひゃらぴー
♪ぴーひゃらぴー ぷっ、ぷっ、ぷっ
夫婦のおならは、まるでお祭りのおはやしのようにゆかいでした。
「おおっ、見事、見事じゃ」
お殿さまは大喜びで、夫婦にたくさんのごほうびをあげました。
さて、この話を隣の欲張り夫婦が聞きました。
「何だ。屁をこくだけで、ほうびをもらえるのか。・・・よーし、わしらも屁をこいて、殿さまにほうびをもらうぞ」
次の日、欲張り夫婦はイモの尻尾をたくさん食べると、殿さまがやって来る所へ先回りをしました。
そして殿さまがやって来ると、お尻をまくって言いました。
「わしらは、天下一の屁こき夫婦でございます。
昨日の貧乏夫婦とは比べものにならないほど、ゆかいな屁をひってごらんにいれますぞ。
そーれ!」
そして欲張り夫婦がお腹に力を入れると、
ぶり、ぶりぶりぶり〜っ
と、おならではなく、うんちを出してしまいました。
「この、無礼者め!」
殿さまはカンカンに怒り、欲張り夫婦を捕まえて牢屋に入れてしまいました。
おしまい