2012年 3月2日の新作昔話
帰ってきた黄金の固まり
沖縄県の民話
むかしむかし、沖縄の役人が唐の国(とうのくに→中国)へ勉強に行きました。
その役人はとても頭が良かったので、役人を気に入った唐の国の王は役人が沖縄へ帰る時に、お土産として黄金の固まりをくれたのです。
役人は沖縄へ帰る船に乗り込みましたが、船に乗っているみんなは役人が黄金の固まりを持っている事を知っているので、役人の事をいつも油断なく見ています。
(黄金をもらったはいいが、このままでは殺されて、黄金を奪われてしまうかもしれない)
そう思った役人は殺されるよりはましだと、みんなが見ている前で黄金の固まりを海に投げ捨ててしまったのです。
こうして黄金は失いましたが無事に沖縄へ帰る事が出来た役人は、帰国のお祝いに市場で『あちぬいゆ(→クロカジキ)』と呼ばれる大きな魚を買ってきました。
そして歓迎に集まった人たちに振る舞う為に、役人が買ってきたあちぬいゆをさばいてみるとどうでしょう。
何と海に捨てたはずの黄金の固まりが、あちぬいゆのお腹から出てきたではありませんか。
このあちぬいゆはキラキラと光り輝く黄金の固まりをエサと勘違いして、黄金の固まりを飲み込んだのでした。
「なんという、偶然」
役人が驚いていると、歓迎に集まった人たちが言いました。
「いや、これは偶然などではなく、あなたの徳のおかげでしょう」
「その通り。身についた徳というのは、捨てても捨てきれない物ですよ」
お祝いに集まった人々は、役人をほめたたえたのでした。
おしまい