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2012年 4月23日の新作昔話

姥捨山(うばすてやま)

姥捨山(うばすてやま)
山口県の民話

 むかしむかし、山口の殿さまは大の老人嫌いで、
「年寄りとは、ただ無駄飯を食らうだけだの、役立たずだ」
と、年寄りを、うば捨て山へ捨てさせていたのです。
 さて、ある家のお婆さんも年寄りになったので、息子が背負って山へ捨てに行きました。
 ところがいよいよ捨てられるという時に、お婆さんが息子に、
「お前が帰りに道に迷わんよう、ずーっと木の枝を折って来たから、それを目印に行きなさい。じゃあ、元気でな」
と、言ったのです。
 それを聞いた息子は、
「こんないい婆さまを捨てるなど、おらには出来ん」
と、もう一度お婆さんを連れて帰り、納屋のすみに隠したのです。

 ある時、隣の国の強い殿さまが、こちらの殿さまへ難題を持ちかけてきました。
 それは、まっ黒に塗られた一本の柱を持ってきて、
《どちらが根元か、見わけよ》
と、いうものでした。
 国中の者が考えましたが、柱は前も後ろも同じ太さに削られているので、どっちが根元だったかなんて誰もわかりません。
 ところがそれを息子から聞いた老婆は、
「その木を水に落としてみなさい。根は重いから、沈んだ方が根元じゃ」
と、教えました。
 息子がその事を殿さまに申しあげると、見事に正解だったので、言いあてられた隣の国の殿さまは、今度はもっと難しい問題を言ってきました。
《灰で縄を作って持ってくるように》
と、命じてきたのです。
 また国中の者が考えましたが、灰で縄を作る事なんて出来ません。
 しかしそれを聞いた老婆は、いとも簡単に、
「灰で縄を作るのではなく、縄を燃やして灰にすればよい」
と、教えました。
 息子はそれを殿さまに申しあげたので、驚いた隣の国の殿さまは、
「知恵者のいない国なら攻め取ってやろうと考えていたが、この国には大した知恵者がいるようだ。攻めるよりも手を結ぶのが得策だ」
と、考えを改め、それから二つの国は仲良くなりました。
 そして老人嫌いの殿さまは、二つの知恵はお婆さんから教えてもらったと息子から聞き、自分が間違っていたことを悟りました。
 そして山に捨てた老人を呼び戻すように触れを出して、それからは老人を大切にするようになったということです。

おしまい

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