きっちょむさん特集
童話集 > 新作

2012年 4月27日の新作昔話

いやしい話

いやしい話
鹿児島県の民話

 むかしむかし、薩摩の国(さつまのくに→鹿児島県)に、とんち名人がいました。
 とんち名人は、よく、おならの話とか、うんこの話とか、おしりの話をしました。
 これが、上品な殿さまには気に入りません。
「これ、お前は人前で、いやしい話を平気で言うが、あれは困るぞ」
 すると、とんち名人は、首を傾げて言いました。
「いやしい話とは、何でございましょう?」
「その、なんじゃ、おしりの話とかな」
「おしりの話ですか。・・・しかし、おしりと言う物は、むかしから、ふくじりなどと言って、縁起の良い物でございますが」
「いや、いかんいかん。これからは、しりという言葉は使わぬように」
「それは、難しいご注文ですね」
「何が難しい? 簡単な事ではないか」
「では、もし殿が使われたら、いかがなさります?」
「おほほほ。もしわしが使ったら、お前に金千両をつかわそう。その代わり、お前が約束を破ったら、今後一切、城への出入りを禁じるぞ」
「はい、承知しました」
 さて、それから三日後。
 とんち名人が城へ顔を出す時間になっても、とんち名人はなかなかやって来ませんでした。
「今日は遅いのう」
 いつもは早く来るのに、その日は昼近くになってから、ようやくとんち名人がやって来ました。
「これ、遅いではないか。どうしたというのだ?」
 殿さまは、少し機嫌を悪くして言いました。
「はい、ちょっと急ぎの用事で、友だちの所へ寄りましたもので」
「そんなに、手間取る用か?」
「はい、お茶をすすめられまして」
「お茶を飲むのに、なぜそんなに手間がかかるんだ?」
「はい、それがいくら待っても、お茶が出てこないので、不思議に思いまして、そっと、裏座敷をのぞいて見ますと・・・」
「うむ、のぞくと・・・」
「木の茶がまで、お湯をわかしておりました」
「なんと、木の茶がまだと」
「はい、さようで」
「何を馬鹿な。それでは、茶がまのしりが、焼けるではないか」
 それを聞いたとんち名人は、ニヤリと笑いました。
「ははーん。殿、今、言いましたよ。しりという言葉を」
「・・・あっ、しまった。これはやられた」
 こうしてとんち名人は、殿さまから千両を頂いたということです。

おしまい

きょうの「366日への旅」
記念日検索
きょうは何の日?
誕生花検索
きょうの誕生花
誕生日検索
きょうの誕生日

トップへ