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2012年 5月21日の新作昔話

オオカミ退治

オオカミ退治
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 むかしむかし、あるところにキツネの親子が住んでいました。
 ある日、お父さんギツネがウナギをくわえて家へ帰ってくると、おかみさんと子どもたちがお腹を空かせて待っていました。
「やったー! 今日はごちそうだぞ!」
 子ギツネたちは大喜びで、串に刺したウナギが火の上で焼けるのを見ていました。
 ところがこの時、家の前をオオカミが通りかかったのです。
「おや? いいにおいだな」
 腹ぺこのオオカミは、キツネの家へ入ろうとしましたが、キツネが戸口をしっかりと閉めているので、入る事が出来ません。
「おいおい、キツネくん、開けてくれよ。いい話しがあるんだ」
 キツネはその声を聞いただけで、森の王さまだと思いました。
 乱暴者でわがままなオオカミは、『王さま』という、あだ名がついているのです。
 子ギツネたちは怖がって、ブルブルと震え出しました。
「はやく、開けてくれよ」
と、オオカミは戸を叩きます。
「だれだい?」
と、キツネが聞き返すと、オオカミは親しげに言いました。
「おれだよ」
「おれって、だれだい?」
「仲間のものだよ」
「ほう、わたしは泥棒かと、思いましたよ」
「いや、ちがうよ。開けてくれ」
「だめです。今日は神父さんが家に来る日です。神父さんでない方は、帰っていただきます」
「じゃあ、いますぐ神父さんになるよ」
「では、神父さんになる証拠を見せてください。それにはまず、頭の毛を丸く剃らないといけませんよ」
「それもそうだな。じゃあ、ちょっと頭を剃ってくれないか?」
「では、戸口に穴が開いているので、そこに頭をつけてみてください。わたしが頭を剃ってあげたら、中に入ってもいいですよ」
「それでは、そうしよう」
 オオカミは戸口の穴に、頭を押しつけました。
(よし、いまだ!)
 キツネはグラグラと煮えたぎっているお湯を、オオカミの頭にザバーッとかけました。
「うわーっ、あつい、あつい! 助けてくれー!」
 頭を大やけどしたオオカミは、命からがら逃げていきました。
 なんとかオオカミをやっつけたお父さんギツネは、得意そうに子どもたちに言いました。
「子どもたちよ。オオカミ退治はこうするんだよ」
 でも、お父さんが子どもたちの方を見ると、子どもたちはまんぞくそうに、大きくなったお腹をさすっています。
 お父さんがオオカミ退治をしている間に、子どもたちはごちそうのウナギを全部食べてしまったのでした。

おしまい

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