2012年 7月6日の新作昔話
鬼が悪さをするわけ
むかしむかし、ある山に鬼が住んでいました。
鬼は頭に鋭い二本の角を生やし、とても恐いまっ赤な顔をしていましたが、これといって人間に悪さをするわけでもなく、とてもく平和で大人しく暮らしていました。
ある日の事、鬼の大将が人間の娘に一目惚れをして、どうしても嫁にしたいと思いました。
そこで毎日毎日、金銀財宝を手土産に娘の家へ通いましたが、娘の父親は手土産を受け取るだけ受け取って、なかなか娘をやろうとは言いません。
こうして百日が過ぎましたが、相変わらず父親は手土産だけを受け取って、鬼を追い返してしまうのです。
これには大人しい鬼も腹を立てて、娘を桶に詰め込むと、さらっていったのです。
さあ、これを知った村人たちは怒りました。
「鬼なんかに、村の娘をとられてなるもんか!」
「そうだ、そうだ。みんなで鬼をやっつけてしまえ!」
こうして村人たちは、手にカマやクワを持って鬼の住む山へと行きました。
そして村人たちは、鬼の住み家を見つけると、
「わーっ!」
と、叫びながら鬼に襲いかかったのです。
戦う事を知らない平和な鬼たちは、襲ってきた人間たちにびっくりすると、娘の入った桶を残して逃げてしまいました。
このすきに村人たちは娘を助け出すと、桶に娘の重さ分だけ石をつめて、娘の着物をかぶせて蓋をしました。
さて、しばらくして鬼たちがおそるおそる戻ってみると、残してきた桶の中から娘の着物が見えています。
「何だ? 人間たちは、娘を取り返しに来たのではなかったのか?」
鬼は不思議に思いながらも、大好きな娘がいるはずの桶を開けてみると、中には着物と石ころしか入っていません。
怒った鬼の大将もは、
「人間とは、何とひどい事をする生き物なのだ。自分の娘を石に変えてしまうなんて! 悪い人間など、こらしめてやる!」
それからです、鬼が人間に悪さをするようになったのは。
おしまい