2012年 8月31日の新作昔話
カエル石
大阪府の民話
むかしむかし、あるところに、とても自然に出来たとは思えないほど、カエルによく似た形の大きな石がありました。
この石は『カエル石』と呼ばれ、カエル石の上に止まった小鳥を、パクリと食べてしまうとの言い伝えがあったのです。
だから村人たち、そのカエル石をとても怖がって、そばに近づこうとはしませんでした。
そんなある日の事、近くの子どもたちが度胸試しに、そのカエル石をさわることを相談したのです。
そして一人のガキ大将がそのカエル石に恐る恐る近づいていくと、ふいに空から一羽のスズメが飛んできて、そのカエル石の上にとまったのです。
すると突然、そのカエル石が大きな口を開けて、自分の上に止まっているスズメをパクリとひと呑みにしたのでした。
さて、この話を聞いた大人たちが半信半疑でカエル石の所にやってくると、その大人たちが見ている目の前で、カエル石は自分の上に止まった小鳥をパクリとひと呑みに呑み込んだのでした。
その日以来、カエル石はさかんに小鳥を食べるようになったのです。
ある日の事、一人のお百姓が畑仕事をしながら、そのカエル石の様子を観察していると、何とカエル石は、日が暮れるまでの間に、三十羽もの小鳥を食べてしまったのでした。
「一日で、三十羽なら、ひと月で九百羽だ。このままでは、村の小鳥は全部食べ尽くされてしまうぞ」
びっくりしたお百姓は村人たちと話し合い、その日の真夜中、カエル石の口のまわりを丈夫な縄でぐるぐる巻きにしばったのです。
「さすがのカエル石でも、これで口を開けられまい」
さて次の朝、お百姓さんが畑に出てカエル石の様子を見ていると、カエル石の上にスズメが三羽止まりました。
「カエル石め、スズメを食おうにも食えないだろう」
お百姓がそう思っていると、カエル石は難無く口を縛っている縄を引きちぎり、大きな口を開けて三羽のスズメをパクリと呑み込んでしまったのです。
「なんと言う力だ。もう、誰もあのカエル石には近寄らせないようにしないと」
こうして村人たちは、カエル石に近づくことを禁止したため、今ではどの石がカエル石か、誰も覚えていないという事です。
でも、今でもカエル石は、上に止まった小鳥を食べているのでしょうね。
おしまい