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2012年 9月17日の新作昔話

友助タヌキ

友助タヌキ
青森県の民話

 むかしむかし、あるところに、息子に先立たれて一人ぼっちになったおばあさんがいました。
 このおばあさんの家の裏には穴があって、一匹の古ダヌキが住み着いています。
 タヌキは人間にあこがれていて、
(神さま、いつか人間に生まれ変われますように。この願いが叶うのなら、どんな事でもします)
と、拾った数珠を首にかけて、毎日かかすことなく、神さまに祈っていました。
 ある日の事、お婆さんのところへ友助と名乗る若い庭師がやってきて、庭の手入れをしてやると言ったのです。
 年を取って庭の手入れが出来ないおばあさんは、大喜びです。
「友助さん、ありがとう。これは、庭手入れのお代金です」
 そう言って、お金を出そうとするおばあさんに、友助は言いました。
「いえいえ、お代をいただこうとは思いません。お婆さんにはいつもよくしてもらっていますから、今日はほんのご恩返しでございます」
と、庭の草むしりや木の枝を刈って、すっかりきれいにしてくれました。
「友助さん、おかげで庭がさっぱりしたよ。でも、どうして親切にしてくれるんだい?」
 おばあさんが不思議そうにたずねると、友助は言いました。
「実は、あっしは裏庭の穴に住まわせてもらっている、タヌキでございます」
 友助はそう言うと、自分の手に墨をぬって、紙にぺたんと手形を取りました。
 不思議な事に、友助の手はちゃんとした人間の手なのに、紙についた墨のあとは、タヌキの足の形をしているのです。
「まあ、あんたが裏庭のタヌキかい。でも、タヌキでも話し相手ができるとうれしいねえ」
 お婆さんは喜んで、それから毎晩そばがきを作り、餅を焼いて、友助タヌキが来るのを待つようになりました。
 友助タヌキも、お婆さんが喜ぶのがうれしくて、毎晩やってくると動物たちから聞いたおもしろい話をおばあさんにしてあげるのです。

 さて、初午(はつうま→二月の初の午の日で、全国で稲荷社を祭る日)のお祭りに、おばあさんは小豆のかゆをたくさん炊いて友助タヌキが来るのを待っていました。
 ところが、いつまでたってもタヌキは現れません。
 真夜中になり、やっと現れた友助は、ひどく落ちつかない様子です。
「友助さん、どうしたの? 何か心配事でも?」
 おばあさんがわけをたずねると、友助は悲しそうな顔をして、こう言うのです。
「実は、わたしはもうすぐ鉄砲で撃たれます。玉は急所をそれて命は助かりますが、そのすぐあとに落とし穴に落ちるでしょう。でも、それで死ぬわけではありません。穴からもすぐに出られますが、そのままオオカミのいる森に迷い込み、逃げ回っているうちに罠にかかます。あっしの命はそれまででございます」
「友助さん。そこまでわかっているのなら、ずっと家にいればいいじゃないの。猟師に見つからない様に隠れていたら、鉄砲玉にも当たらないし、罠にかかる事もないのだから」
 おばあさんはそう言って、友助を引きとめましたが、友助は悲しげに笑いながら言いました。
「こいつは、あっしが人間に変わることが出来た代償ってやつですよ。どこへ隠れていても、結局は死ぬことになるでしょう。・・・それよりおばあさん、今夜はあっしが一世一代の大化けをやってお見せしましょう」
 その夜、友助はありったけの力を使って、大むかしの合戦の様子をお婆さんに見せてくれました。
 そうして朝になると、友助はどこへともなく姿を消して、二度と帰ってくることはありませんでした。
 それからしばらくして、猟師がタヌキの毛皮を売りに来ました。
 そのタヌキは、首に数珠をさげています。
「ああ、これはまちがいなく友助さんだよ」
 おばあさんは猟師からタヌキの毛皮を買い取って、茂森山の観音さまでお経を読んでもらい、友助が人間として生まれ変われるように心から祈りました。

おしまい

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