2012年 10月12日の新作昔話
不思議な白いヒツジたち
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むかしむかし、あるところに、とても貧しい農民の一家がいました。
農民は地主のひどい仕打ちに耐えかねて、山奥に隠れ住んでいましたが、山奥では獣たちが畑を荒らすし、人を襲うトラやオオカミも出てくるので、毎日がおびえながらの生活でした。
ある夜の事、家の娘が畑の見張りをしていると、どこからか真っ白なヒツジの群れがやってきて、畑を駆け回ったのです。
おどろいた娘は家で寝ている家族を起こして、みんなで畑に出てみると、やはりヒツジたちが畑を駆け回っています。
「このままでは、せっかくの畑が台無しになってしまう」
家族はヒツジたちを捕まえようとしましたが、ヒツジたちは畑を荒らすだけ荒らし回ると、山の中へと消えていったのです。
翌朝、家族は荒らされた畑を少しでも直そうと畑に出て行ったのですが、不思議な事に畑はヒツジたちに踏み荒らされたはずなのに、いつもよりも作物がよく育っているのです。
そして次の夜も、また次の夜も、白いヒツジたちがやってきて畑を荒らしましたが、そのたびに作物はよく育つようになったのです。
それからしばらくしたある日、親戚が一家をたずねてきたので、一家はこの不思議な出来事を話しました。
するとその話はあっという間に広まり、意地悪な地主の耳にも入ったのです。
地主は、
「よし、おれの畑もそのヒツジたちに荒らしてもらって、もっと作物が取れるようにしてやろう」
と、山奥の一家の畑を高い値段で買い取ると、その畑から自分の家の畑につながる長い柵を作ったのです。
そして夜になると、地主は現れたヒツジたちを自分の畑へと追い込みました。
そしてヒツジたちにメチャクチャに荒らされた自分の畑を見て、地主はニヤリと笑いました。
「よし、これで明日になれば、おれの畑の作物はよく育っているだろう」
そして翌日、地主がニコニコしながら畑にやってくると、畑は昨日の荒らされたままで、おまけにその年からその畑に何を植えても育つ事はなかったそうです。
おかげで地主は貧乏になり、この土地を捨ててどこか遠くへ行ってしまったそうです。
おしまい