2012年 10月15日の新作昔話
ライオンの居眠り
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むかしむかし、ある森に、けものたちが集まって集会をしました。
「今日は、『森の決まり』について相談しよう」
リーダーのライオンは、そう言って集会を始めましたが、そのうちにライオンが、こっくり、こっくりと、いねむりを始めたのです。
すると、それを見つけたジャッカルが言いました。
「誰か、なわを持ってこい。おもしろい事を始めるぞ」 。
「おもしろい事だって! よし、任せろ」
イタズラ好きのキツネが、さっそくなわを持ってきました。
「これでどうだい?」
「よし、丈夫そうな、なわだ。これを、ライオンの尻尾に結びつけるのさ」
ジャッカルはそう言うと、ライオンの尻尾を、そっと引っ張りました。
しかしライオンは、眠ったままで、まるっきり気がつきません。
「何だ? 何が始まるんだ?」
そのうちに、みんなも集まってきました。
「よし、結ぶのは、おいらに任せて」
キツネは、ライオンの尻尾と近くの木を、なわで結びつけました。
「よし。出来たぞ」
キツネが言うと、ジャッカルが、つんと、なわを引きました。
するとライオンは、ようやく目をこすりながら起きました。
「ああ、ごめんごめん、ゆうべは一晩中、森を見張っていたのでね。でも、きみたちが話し合っていた事は、ちゃんと聞いていたからね」
それを聞いたけものたちは、くすくす笑い出しました。
ライオンは、やっと自分の尻尾に、なわが結んである事に気がつきました。
「何だこれは! 誰だ、こんな悪い事をしたのは?!」
ライオンが大声で怒鳴ると、隣にいたジャッカルは知らん顔で言いました。
「さあ? ぼくではありませんよ」
「では、サル! お前の仕業か!」
「と、とんでもありません」
「じゃあ、キリンか! それともイノシシか!」
「わたしじゃ、ありません」
「おれじゃ、ないですよ」
すると、キツネがペロリと舌を出して言いました。
「申し訳ない。やったのは、このわたしなんです」
「このイタズラギツネめ、食い殺してやる!」
ライオンはキツネに、飛びかかろうとしましたが、でも尻尾が木に結ばれているので、その場から動けません。
「あはははは。そう簡単には、なわはほどけないよ」
キツネは、笑いながら逃げ出しました。
「待て!」
ライオンは鋭い牙で、なわを食いちぎろうとしました。
するとその時、ジャッカルが言いました。
「ごめん、実はわたしが言い出した事なんだ。きみが眠ってしまったので、つい、イタズラをしてみたくなったのさ」
「・・・なるほど」
ライオンは、頭をかきながら言いました。
「確かに、ねてしまった、わしも悪い」
これを聞いたイタズラ好きのジャッカルは、みんなの方を振り向いて、ペロリと舌を出しました。
おしまい