2012年 10月22日の新作昔話
ソロモン王の名裁き
古代イスラエルの昔話 → イスラエルの情報
むかしむかし、同じ家に住む二人のお手伝いが、三日の違いで男の子を生みました。
ところが先に生まれた子どもが、突然死んでしまったのです。
そこで子どもが死んだ女は、同じ部屋で寝ているもう一人のお手伝いの子どもと、死んだ自分の子どもを入れ替えてしまったのです。
朝になり、子どもをすり替えられたお手伝いは、自分が抱いている子どもが死んでいるのを見てびっくり。
「ああっ! 赤ちゃんが死んでいる! ・・・でも、この子は!?」
死んでいる子どもが自分の子どもではなく、もう一人のお手伝いの子どもで、そのお手伝いが自分の子どもを抱いてすやすや寝ているのを見つけました。
そこで子どもをすり替えられたお手伝いは、もう一人のお手伝いに子どもを返してくれるように言いましたが、この子は自分の産んだ子どもだと言い張って、子どもを返そうとはしません。
そこで二人はソロモン王に訴え出て、正しい判定をしてもらうことにしたのです。
王は二人の話を聞くと、二人に言いました。
「事情はよく解った。それでお前たち、生きている子どもが自分の子どもであると言う証拠はないのか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
二人とも、肌の色も目の色も髪の色も同じだったので、生きている子どもが自分の子どもだという証拠がなかったのです。
「それでは、わしが今から二人に公平な解決を行う。どの様な方法であっても、二人とも文句は無いな」
「はい。お願いします」
「はい。わたしも王にお任せします」
「よし」
王は家来の一人に剣を持ってこさせると、家来に命じました。
「剣で子どもを半分に切り裂け! そして半身をこの女に。もう半身をあの女に与えよ」
これを聞いて、二人のお手伝いは悲鳴を上げました。
すると王は、二人に言いました。
「何を驚く。お前たちはわしに裁きを一任したであろう。証拠がない以上、これがもっとも公平な裁きだと思うが」
すると、子どもをすり替えた方のお手伝いが言いました。
「おっしゃる通りです。早く切り分けてください。自分の物にならないとしても、その女にとられるのだけは嫌です!」
次に、本当の母親であるお手伝いが言いました。
「どうか生きている子をあの女に与えてください。自分の物にならないとしても、子どもを殺されるのだけは嫌です!」
それを聞いてソロモン王はにっこり笑うと、子どもを本当の母親に渡すように命じて、こう言いました。
「子どもにとって最も良い母親は、自分を大切に育ててくれる母親だ。もし本当の母親であったとしても、子どもを殺す事に同意する母親には、母親の資格はない!」
こうして子どもはソロモン王の名裁きにより、本当の心優しい母親の元へ帰ることが出来たのです。
おしまい