2012年 12月21日の新作昔話
ベッドの下の小人
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むかしむかし、あるところに、チャンという若者が旅をしていました。
チャンは、河南省のコンシェンという村の、小さな宿屋に泊まりました。
チャンが荷物を運び込んで、ほっとしていると、宿の主人がやって来て言いました。
「お客さま、荷物をお運びいただいたばかりで申し訳ありませんが、別の部屋をご用意しましたので、そちらへお移りになりませんか?」
「それは、どういう訳で?」
「はい、家の者がうっかりこの部屋に案内してしまいましたが、実はこの部屋、夜になると怪しい物が現れるとのうわさで」
するとチャンは、笑って言いました。
「大丈夫です。どんな物が出て来たって、驚きませんよ」
さて、夜になりました。
チャンが薄明かりをつけて眠っていると、ベッドの下で水の流れるような音がします。
「おや、何だろう?」
チャンがベッドの下をのぞくと、ベッドの下から、小さな小さな奇妙な服の男が出てきました。
小さな男は、チャンをぐいと睨みつけました。
でも、ほんの十センチぐらいの男に睨まれても怖くありません。
チャンが睨み返すと、男はぶつぶつ言いながら消えてしまいました。
しばらくすると、さっきと同じような小人が、今度は大勢現れました。
今度の小人たちの中には、黒い冠をかぶった偉そうな態度の役人がいて、他の小人がかつぐこしに乗っています。
役人は、チャンを見ると何やら早口で言いましたが、チャンには何と言っているのか分かりません。
やがて役人は他の小人たちに命じて、チャンに飛びかかってきました。
(ははーん、ぼくをつかまえる気だな)
小人たちはチャンの靴にしがみついたり、靴下を引っ張ったりしますが、チャンがびくともしないので、今度は役人が自分からむかってきました。
「こいつめ、こらしめてやる」
チャンは、役人をつまみあげました。
役人はつまみあげられると、もう、ぐうの音も出ない様子で、かちんかちんになりました。
そして机に乗せると、バタンと倒れてしまいました。
すると他の小人たちが声を振り絞り、目に涙をためてチャンの前に頭を下げました。
「ご主人を、お助けください」
チャンは、ニヤリと笑って言いました。
「いいだろう。主人は返してやろう。その代わり、わたしに贈り物をするのだぞ」
小人たちは、口々に何かを言いながらどこかに行ってしまいましたが、間もなく、かんざしやら、くしやら、女の人が髪の毛につける髪飾りをたくさん運んできました。
なぜ、髪飾りなのかは分かりませんが、なかなか高価そうな品物です。
「よし、主人は返してやろう」
チャンが役人を下ろすと、小人たちはあわてて役人をこしに乗せて、そのまま逃げてしまいました。
それからしばらくして、宿の主人の怒鳴り声がしました。
「誰か来てくれ! 妻の部屋に泥棒が入った。髪飾りを盗まれてしまった!」
何と小人たちは、宿の主人の奥さんの部屋から髪飾りを盗んで、チャンの所へ運んできたのでした。
おしまい