2013年 6月7日の新作昔話
オンドリを飼う事をやめた村人 弘法話
愛媛県・宇和島市の民話
むかしむかし、弘法大師という偉いお坊さんが、四国巡礼の旅をしていた頃のお話しです。
宇和島(うわじま)まで来た大師は、遠く海の向こうに見える九島(くしま)という島が大変気に入って、赤松(あかまつ)から舟に乗って九島に渡りました。
そして九島の鯨大師(くじらたいし)というところに着いた大師は、きれいな海に囲まれた島を眺めて満足げに言いました。
「なんと美しい島だ。
この美しい島を、高野山の霊場の一つにしたいところだが、しかし今は旅の途中。
明日の朝には、また旅に出なければならぬ。
・・・よし、今夜一晩の内にこの島を霊場にしよう」
そこで大師は霊場には欠く事の出来ないお堂を、急いで作りはじめたのです。
やがて日が暮れて夜になっても、大師はお堂を作る手を休めませんでした。
お堂はみるみる出来上がっていき、この調子なら朝までに完成するでしょう。
ところが夜明けがまだ遠い真夜中、対岸の赤松の村の方から、何を勘違いしたのか、あわてもののオンドリが鳴き声をあげたのです。
「コケコッコー、コケコッコー」
その鳴き声を聞いた大師は、びっくりです。
「なんと、もう夜が明けるのか?! あと少しで完成するというのに。残念じゃ、本当に残念じゃ」
こうして大師は、この島を霊場の一つにする事をあきらめました。
のちにこれを知った赤松の村人たちは、九島が霊場の一つにならなかった事を非常に残念がりました。
そして村人たちは、オンドリを飼う事をやめたと言われています。
おしまい
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