2013年 11月4日の新作昔話
きんたろう
神奈川県の民話
むかしむかし、あしがら山の山おくの大きなほらあなに、きんたろうという力もちでげんきいっぱいの男の子がおかあさんといっしょにくらしていました。
おかあさんは、さむらいのおとうさんとけっこんしていっしょにくらしていたのですが、いくさにまきこまれておとうさんはなくなってしまいました。
そして、そのいくさでおかあさんがすんでいたいえが火でぜんぶやかれてしまいました。
そのとき、おかあさんのおなかには、あたらしいいのちである大きな赤ちゃんがいました。
おかあさんは、いくさからのがれるため、赤ちゃんがいる大きなおなかをだいじにかかえながらあしがら山へやってきたのです。
まよなかに山おくの大きなほらあなにやってくると、おかあさんは赤ちゃんをうむためにずっとがんばっていました。
そして、つぎの日のあさ、あしがら山に「おぎゃあ、おぎゃあ」とげんきななきごえがひびきわたりました。
そのなきごえは、おかあさんがうんだばかりの赤ちゃんのなきごえです。
その赤ちゃんはからだが赤くて、げんきいっぱいの大きな赤ちゃんです。
おかあさんは、この赤ちゃんがげんきでじょうぶにそだつようにねがいをこめて、「きんたろう」という名前をつけました。
おかあさんは、きんたろうがおっぱいをほしがっていたので、きものから大きなおっぱいを出すと、きんたろうはとてもおいしそうに大きなおっぱいをすっていました。
やがて、おかあさんはきんたろうをそだてるために、ほらあなのちかくにはたけをたがやしはじめました。
たがやしたはたけには、たねイモをたくさんうえています。
そのころには、きんたろうもよちよちあるきができるようになったので、おかあさんはきんたろうのためにはらがけをつくりました。
そして、きんたろうにはらがけをつけさせると、きんたろうはにこにこしながら、はらがけをつけるのがおきにいりになりました。
おかあさんがはたけしごとをしているあいだ、きんたろうははたけのちかくでどうぶつたちとあそぶようになりました。
クマやサルやシカといったどうぶつたちは、きんたろうにさかだちや木のぼりやかけっこをおしえました。
そして、きんたろうはクマといっしょにすもうをしたりしてあそびました。
きんたろうはおともだちになったどうぶつたちに名前をつけました。子グマには「クマごろう」、子ザルには「サルきち」、子ジカには「シカまる」と名前をつけると、どうぶつたちもその名前をたいへんきにいりました。
こうして、きんたろうはおかあさんの大きなおっぱいをいっぱいのんで、どうぶつたちといっぱいあそんですくすくとそだっていきました。
そして、きんたろうが10さいになると、きんたろうはものすごく力もちでげんきいっぱいの男の子になりました。
そのころになると、きんたろうはクマごろうにまたがっておうまのけいこをするようになりました。
おうまのけいこがおわると、きんたろうとどうぶつたちで石をつかっておてだまあそびです。
ほかのどうぶつたちは小さい石でおてだまをしていますが、きんたろうはクマのあたまとおなじくらいの大きさのとてもおもい石をおてだまにしてあそんでいました。
おてだまあそびがおわると、きんたろうがいちばん大すきなすもうのけいこです。
すもうのけいこでは、いつもさいごにのこるのはとてもつよいきんたろうとクマごろうです。
そして、さいごのとりくみとなったきんたろうとクマごろうのよこづなどうしのたいけつでも、きんたろうはくまごろうをかんたんになげとばすほどの力もちになっていました。
もちろん、きんたろうはあそんでばかりではなく、おかあさんのおてつだいもきちんとしてくれるこころのやさしい男の子です。
大きなほらあなのちかくにあるおかあさんのはたけでは、大きなイモがたくさんせいちょうしていたので、きんたろうはおかあさんとサルきちといっしょにイモほりをしました。
きんたろうとおかあさんにとって、いちばんたのしみにしているのがこのイモほりなのです。
「うんしょ、うんしょ、う〜んしょ! とっても大きいイモがとれたぞ」
きんたろうが手にしているのは、ほかの大きなイモよりもかなり大きいばけものイモです。
きんたろうがじぶんの力でばけものイモをひっこぬいたのを見て、おかあさんも大よろこびです。
こうして、イモほりでたくさんとれた大きなイモは大きなかごに入れてから、きんたろうが大きなほらあなまでりょうてでもち上げてはこびました。
もちろん、きんたろうがひっこぬいたばけものイモも大きなかごの中に入っています。
その日のよる、大きなほらあなの中では、とれたばかりのイモをなべの中でむしやきにしているところです。
「ぐうう〜っ。かあちゃん、おなかのおとがなったよ」
きんたろうはきょうもどうぶつたちとあそんだり、おかあさんのおてつだいをいっぱいしたので、おなかがすいてきたようです。
「きんたろう、イモがほくほくとやけたからはやくたべてね。サルきちにもイモをあげるからね」
おかあさんは、できたてのイモをきんたろうとサルきちに手わたししました。きんたろうは、できたてのイモを口に入れて食べています。
「かあちゃん、できたてのイモはほんとうにうまいぞ!」
おかあさんは、きんたろうがイモをおいしそうにたべているのを見て、とてもうれしそうなひょうじょうを見せました。
おかあさんもサルきちもイモをおいしそうにたべているようです。
「さあ、きんたろうがとってきたばけものイモもほくほくとやけたよ。ぜんぶたべれるかな?」
「かあちゃん、おらはイモをたべるのが大すきだからぜんぶたべるよ」
ばけものイモは、それだけでなべの中がいっぱいになるような大きさです。
おかあさんはきんたろうにばけものイモを手わたしすると、きんたろうはばけものイモをとてもおいしそうにほうばりながらたべています。
そして、きんたろうはあっというまにばけものイモをぜんぶたべることができました。
きんたろうもおかあさんも、たんねんにそだてたイモがたくさんとれて、そのイモをたくさんたべられることがなによりもしあわせなことです。
つぎの日のあさのことです。
きんたろうは、いつものように目がさめると、おなかから「ギュルルル、ゴロゴロゴロッ〜」というおとがきこえてきました。
そして、おしりのほうもムズムズとするようになりました。
きんたろうは、すぐに大きなどうくつからそとに出ました。
すると、きんたろうのところにサルきちやクマごろうがやってきました。
「サルきち、クマごろう、きょうはなにをしてあそぼうかな?」
きんたろうもどうぶつたちも、いつもげんきにあそぶことがたのしみです。
しかし、きんたろうのおなかからふたたび「ギュルルル、ゴロゴロゴロッ〜」というおとがきこえると、きんたろうはすぐにしゃがみました。
「うんっ、うんっ、うううう〜んっ!」
きんたろうはいきみごえをあげながら、おなかとおしりをふんばっているようです。
そして、きんたろうがふんばるのをやめると、すっきりしたひょうじょうであかるいえがおを見せました。
「かあちゃん、きょうもでっかくて長いのがいっぱい出たから、こっちにきて〜」
きんたろうは、大きなほらあなにいたおかあさんをよぶと、おかあさんは木のくわをもってそとへ出ました。
きんたろうがおかあさんをよんだのは、きんたろうがでっかいウンコがいっぱい出たからです。
おかあさんも、きんたろうのでっかいウンコを見てほほえんでいます。
「ふふふ、きのうのよるにばけものイモをいっぱいたべたおかげで、でっかいウンコがいっぱい出たね。でっかいウンコがいっぱい出るのはきんたろうがげんきな男の子であるあかしだね」
おかあさんは、でっかくてげんきいっぱいのウンコが出たきんたろうをほめると、きんたろうもすこしてれながらえがおを見せました。
「さあ、きんたろうのウンコに土をかけようかな。げんきなウンコはまた土になってかえってくるよ」
おかあさんは、きんたろうのでっかいウンコに土をかけてから、じめんをたいらにしたのでした。
きんたろうは、ちかくのたきへいって水をくみにいくのがまいにちのしごとです。
きょうもおけをもってたきの入り口へやってくると、さいしょにたきの水でウンコでよごれているおしりをあらいながしています。
すると、たきの入り口の水の中でくらしている大きなコイが、きんたろうの目の前にすがたをあらわしました。
きんたろうはいつものように大きなコイのせなかにとびのりました。
大きなコイはきんたろうをのせたままで、たきの入り口のふかいところまでもぐったり、水の中からとびあがったりしてあそんでいます。
きんたろうは大きなコイもおともだちなので、いつも大きなコイのせなかにとびのるのがたのしみです。
きんたろうは、大きなコイとあそびおえると、おけにたきの水をたくさんくんでから、おかあさんのイモばたけへいきました。
「かあちゃん、たきの水をいっぱいくんできたよ。あれっ、いつもだったらかあちゃんがはたけにいるのにまだきてないぞ。どうしたのかな?」
きんたろうがイモばたけへやってくると、いつもだったらいるはずのおかあさんがまだきていません。
きんたろうがいつもすんでいる大きなほらあなへ行くと、ほらあなの前に大きなイノシシがなんびきもいたのです。
大きなイノシシたちは、あしがら山やそのまわりの田んぼやはたけをあらしまわっており、そのあばれかたからおおくの人からおそれられています。
そのイノシシたちは、大きなほらあなの中にいるおかあさんをにらみつけると、イノシシのおやぶんがするどいつめでおかあさんのかおに大きなきずをつけました。
きんたろうがいそいでほらあなの中へ入ると、おかあさんがかおに大きなきずがあるのを見て、「かあちゃん、かあちゃん!」と大きなこえでさけびました。
すると、おかあさんはきんたろうに「きんたろう、はやくにげなさい」といいました。
でも、きんたろうはおかあさんのかおに大けがをさせた大きなイノシシをゆるすことができません。
そこへやってきたサルきちが、大きなイノシシがおかあさんのイモばたけのほうへやってきたことをきんたろうにつたえました。
きんたろうは、大きなほらあなから外へ出ると、いそいでイモばたけのほうへいきました。
きんたろうがイモばたけへ行くと、大きなイノシシたちがいまにもイモばたけをあらそうとしているところです。
「おまえたちだな! おらのかあちゃんのかおに大きなきずをつけたのは!」
きんたろうは、大きなイノシシたちにたいしてかんぜんにおこったこえでいいました。
すると、大きなイノシシがきんたろうをおそってきました。
「わるいことをするやつは、ぜったいにゆるさないぞ」
きんたろうは、おそってきた大きなイノシシを石おので「えいっ!えいっ!」とつぎつぎとたおしていきました。
のこったのは、大きなイノシシのおやぶんだけです。
しかし、ほかのイノシシとはちがって、イノシシのおやぶんはとてつもなくつよいうえに、するどいつめや大きなきばをもっています。
きんたろうはいちばんとくいなすもうで大きなイノシシのおやぶんへむかっていきましたが、あしがら山のよこづなであるきんたろうの力でもっても、大きなイノシシのおやぶんにはねかえされていまいました。
そのとき、クマごろうがきんたろうをたすけるために、大きなイノシシのおやぶんのはなのところにとびかかりました。
これにはイノシシのおやぶんもびっくりしましたが、イノシシのおやぶんはかおをよこへゆすりながら、クマごろうをなげとばしました。
「よくもクマごろうをいためつけたな!」
クマごろうがなげとばされたのを見たきんたろうは、じぶんとおなじせたけでとてつもなく大きくてでかい石を力を入れて上までもちあげると、「えーい!」と大きくてでかい石をイノシシのおやぶんへなげつけました。
大きくてでかい石があたったイノシシのおやぶんはほんきでおこり出しましたが、きんたろうはイノシシのおやぶんのはなのところにとびのると、大きいイノシシのおやぶんの目の前で「ベロベロベエ〜」をしました。
きんたろうからバカにされたイノシシのおやぶんはいかりをばくはつさせました。
きんたろうはイノシシのおやぶんのはなからとびおりると、いそいでちかくの大きな木まではしっていきました。
そして、きんたろうはすぐに木のぼりをして上までのぼりました。
しかし、イノシシのおやぶんはきんたろうがのぼった大きな木を大きなきばをつかって口にくわえると、そのまま木のねっこからひきぬきました。
しかし、きんたろうもひっしに大きな木にしがみついています。
そして、きんたろうはふたたび大きなイノシシのおやぶんのはなにとびのりました。
大きなイノシシのおやぶんは、きんたろうと大きな木をひきずりながら、まるでとっしんするようにはしり出していきました。
すこしさきにはふたつの大きないわでみちがせまくなっているところがあります。
そのとき、きんたろうはいいかんがえをおもいつきました。きんたろうはりょうあしをイノシシのおやぶんのかおをはさむと、イノシシのおやぶんの目の前にじぶんのおしりを見せました。
「ブッ! ブブッ!」
きんたろうは、イノシシのおやぶんのかおにでっかいオナラを2れんぱつしました。
それは、いつも大きなイモをたべているきんたろうらしいげんきなオナラです。
イノシシのおやぶんは、きんたろうのでっかいオナラがくさいのか、きんたろうから目をはなしてしまいました。
ふたつの大きないわが目の前に見えると、きんたろうは大きないわへとびうつりました。
大きなイノシシのおやぶんは、ひきずっていた大きな木がふたつの大きないわにぶつかって、そのはずみでむかいの山までとんでいってしまいました。
そして、イノシシのおやぶんはその山のてっぺんのくぼみにおしりがはさまってしまって、ぬけなくなってしまいました。
こうして、きんたろうはあしがら山をあらしまくっていた大きなイノシシたちをうちまかすことができました。
きんたろうは、かおに大けがをしたおかあさんをつれて、あしがら山のちかくにあるおんせんにいきました。
そのおんせんは、きずやびょうきをなおしてくれるので、おかあさんは大けがをしたかおにおんせんのおゆであらいながしました。
すると、大けがでかおにきずがあったのがみるみるうちになおっていきました。
「きんたろう、ほんとうにありがとう」
おかあさんは、大けがをしたじぶんをたすけてくれたきんたろうにかんしゃしました。
きんたろうも、いつもやさしいおかあさんのことが大すきなのでうれしそうです。
やさしいおかあさんやどうぶつたちにかこまれてそだったきんたろうは、のちにりっぱなさむらいになって、わるいおにや土ぐもをつぎつぎとたいじしてゆうめいになったということです。
おしまい
この物語は、福娘童話集の読者 しのり様からの投稿作品です。
しのりの童話通り → http://ameblo.jp/shirai-shino
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