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2013年 11月22日の新作昔話

富士山の仙人

富士山の仙人
岩手県の民話

 むかしむかし、源義経が陸奥の国(むつのくに→岩手県)の衣川の館で討ち滅ぼされた時、家来の一人に常陸坊海尊(ひたちぼうかいそん)という僧兵あがりの侍がいました。
 何とか生き延びた海尊は駿河の国(するがのくに→静岡県)へ行くと、死んだ仲間の供養のために富士山へ登っていきました。
 しかし飢えと寒さで凍えてしまい、もう一歩も動けません。
 その場に倒れた海尊は、まっ青な空を見上げながら思いました。
(わが命も、ついにこれまでか。ご主人さま、ただいまあなたさまのお側へ参ります)
 そう思った時です。
 ふと手を延ばすと岩の上に、あめの様な物がこびりついていました。
 空腹だった海尊は、何気なくそれを口に入れて、そのおいしさに目を丸くしました。
(うまい! 何という、うまさだ!)
 しかも口に入れた途端、あれほどの疲れがうその様に消えたのです。
 よく見ると、あめの様な物はあちこちにあって、いくら食べてもなくなりそうにありません。
(これは、御仏がおれに生きろと言っているのか?)
 海尊は覚悟を決めると、この富士山で生きる事にしました。
 
 海尊の姿は、あごひげが長く伸びて仙人の様な姿ですが、外見の老いた姿と反対に中身はますます若返っていきます。
 こうして海尊は富士山で三百年もの長い間暮らしていましたが、やがて信州(しんしゅう→長野県)の深い山の中へ移り住むと、永久に年を取らずに生き続ける方法を見つけて、今でも生き続けていると言われています。

おしまい

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