1月27日の世界の昔話
お母さんがあんでくださったボウシ
スウェーデンの昔話 → 国情報
「ボウシをあんであげましょうね」
お母さんは息子のアンデルスに、赤い糸でボウシをあんであげました。
「少し糸がたりないから、緑の糸をたしましょう」
お母さんは、赤い糸が足りなくなったので、ボウシのてっペんには緑の糸で、フサフサとした長いふさをつけました。
かわいいボウシのできあがりです。
アンデルスがかぶると、
「とてもかわいいよ、アンデルス」
「よくにあうわ、アンデルス」
と、おにいさんやおねえさんがほめました。
「みんなに見せてくる!」
アンデルスは、外へ飛び出しました。
すると、友だちのラルスがそばへきて、
「ねえ、そのボウシを、ぼくのジャックナイフと取りかえないか?」
と、いいました。
アンデルスは、手をふってかけ出しました。
こんどは、きれいな服を着た女の人が、アンデルスを見るとスカートをつまんでおじぎをして、
「まあ、すてきなボウシ! あなたもご殿のパーティーにいくのでしょう?」
と、聞きました。
アンデルスは、ご殿へかけていきました。
ご殿へはいろうとすると、番人が、
「こら、子どもは、はいってはならん!」
と、追い返そうとしました。
そこへ、王女さまが通りかかって、
「あら、かわいいボウシをかぶったぼうや! いっしょにいらっしゃい」
と、アンデルスをご殿の大広間に連れていきました。
大広間にいたお客は、
「ほほう! いいボウシだ」
と、ほめました。
王女さまは、アンデルスをごちそうのいっぱい並んだテ一ブルの前のイスに、腰かけさせました。
「さあ、ボウシをぬいで」
と、王女さまは、ボウシを取ろうとしました。
すると、
「いや、いや!」
アンデルスは、ボウシを取られるのかと思って、ボウシを両手で押さえました。
「じゃあ、だっこしてあげるから」
王女さまは、アンデルスをひざの上に抱きあげて、ボウシをぬがせようとしました。
けれども、アンデルスはボウシを押さえたままです。
「じゃあ、この首飾りをあげるから」
王女さまは、アンデルスの首に自分の金の首飾りをかけてから、ボウシを取ろうとしましたが、アンデルスはボウシをぬごうとしません。
そこへ王さまがやってきて、
「ぼうや、わしの金の冠(かんむり)と、そのボウシを取りかえてくれんかな?」
といって、自分の金の冠をアンデルスの頭にかぶせて、ボウシを取ろうとしました。
「いや、いや! いやです!」
アンデルスは両手でボウシを押さえたまま、ご殿を逃げ出して、急いで家へ帰りました。
王女さまが首にかけてくれた首飾りは、どこかへ落としてしまいました。
アンデルスは、ご殿でのできごとをみんなに話しました。
すると、おにいさんがいいました。
「おしかったなあ。金の首飾りや金の冠があれば、それを売って、ボウシなんかいくらでも買えるんだぞ!」
アンデルスは、ほおをまっかにして、
「ちがうよ。このボウシがいいんだ! だって、お母さんがあんでくださったボウシだもの!」
と、いいました。
「まあ、この子ったら」
お母さんは、アンデルスをしっかり抱きしめました。
おしまい
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