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2月7日の世界の昔話

ふしぎな玉

ふしぎな玉
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 むかしむかし、ある川のほとりに、まずしいおじいさんが、イヌとネコといっしょに、なかよくくらしていました。
 おじいさんは森へいき、かれ枝をひろい集めるとそれを町で売って、そのお金でお米とお酒を買ってきました。
「さあ、おまえたち。こんやはひさしぶりに、ばんめしがたべられるよ」
 おじいさんはイヌとネコにこういいながら、お米をナベに入れて火にかけました。
 やがてお米はグツグツとにえて、おいしそうなにおいが、あたりにひろがりました。
 そのとき、
 トン、トン、トン。
と、戸をたたく音がしました。
 おじいさんが出てみると、みすぼらしい旅人が、戸口にたっていました。
 フラフラしており、今にもたおれてしまいそうです。
「わたしはおなかがすきすぎて、もううごく力もありません。どうか、食べ物をおめぐみください」
 おじいさんはすぐに、その旅人を家の中に入れて、できたばかりのおかゆをたべさせてやりました。
 それから、お酒の入ったツボを出してきて、おわんについでやろうとしました。
 ところが、旅人はそのツボをひったくると、ゴクゴクと、みんな飲んでしまったのです。
「プハー。いい気持だ。あんたは、だいじな酒と米とを、すっかりわたしにくれてしまった。お礼にこれをあげよう」
 旅人はこういって、おじいさんに小さなコハクの玉をくれました。
「これを、あの酒ツボに入れておきなさい」
 こういうと、旅人のすがたは、かきけすように見えなくなりました。
「ふしぎな旅人だ。・・・たしか、これを酒ツボに入れろといっていたな」
 おじいさんは、コハクの玉を酒ツボの中に入れてみました。
 するとふしぎなことに、みるみるうちに、酒ツボはお酒でいっぱいになったのです。
 おじいさんは、それをおわんについで飲んでみました。
「うまい!」
 おじいさんはいままで、こんなすばらしいお酒を飲んだことがありません。
 おかわりをしようと、ツボの中をのぞいてみて、おじいさんはまたビックリ。
 ツボの中のお酒は、さっきおわんについだぶんだけ、ちゃんとふえているのです。
 それからは、おじいさんのくらしは、だんだんらくになりました。
 おいしいお酒が、たちまち近所のひょうばんになって、みんなが買いにきたからです。
 けれども、お金のない人には、ただでお酒をあげました。
 こうしておじいさんとイヌとネコの三人は、なに不自由なく、たのしいまいにちを送っていました。
 ところが、ある日のことです。
 ふと、気がつくと、いつもツボいっぱいに入っているお酒が、だいぶへっているではありませんか。
 よく見ると、あのたいせつなコハクの玉が見えません。
 きっと、だれかにお酒をわけてあげたとき、その人のツボの中に、うっかりつぎこんでしまったのでしょう。
 おじいさんのお酒は、その日からふえなくなりました。
 そしてとうとう、すっかりなくなってしまいました。
 おじいさんは、またびんぼうになりました。
「さあさあ、これからまたびんぼうぐらしだ。これが、さいごのごちそうだよ」
 おじいさんはこういって、さいごのごちそうをイヌとネコにやりました。
 次の日、イヌはネコにむかっていいました。
「ぼくは、コハクの玉のにおいを知っている。そばまでいけば、きっとにおいでわかる」
 すると、ネコはいいました。
「あたしは、どこへでもコッソリもぐりこんで、さがしまわることができるわ」
「じゃあ、二人でさがしにいこう」
 イヌとネコはさっそく、近所の家を一けん一けんさがし歩きました。
 こうして、一週間がたち、二週間がたちました。
 いっしょうけんめいさがしましたが、コハクの玉は、どうしても見つかりません。
「ひょっとすると、川のむこうに住んでいる人のところじゃないかな?」
 イヌが、首をかしげていいました。
「きっとそうだわ。川のむこうをさがしてみましょう」
と、ネコがいいました。
 いまは冬で、川はこおりついていたので、二人はらくに、むこう岸まで歩いていくことができました。
 ところが、むこう岸のイヌやネコは、二人を知りません。
 ですから、イヌたちは二人が近づくと、
「ウー、ワンワン」
と、ほえたてました。
 ネコがコッソリしのびこもうとしても、すぐに見つかって、
「フーフー、ニャーオ、ニャーオ」
と、知らないネコからしかられました。
 そこで二人は、人間も、イヌも、ネコも、みんなねしずまってから、コッソリさがしまわりました。
 でも、やっぱりコハクの玉は見つかりません。
 さむい冬がすぎて、もうすぐ春がやってきます。
 川の氷は、とけはじめました。
 けれども、コハクの玉は見つかりません。
「ああ、おじいさんは、食べ物もなくてこまっているだろうなあ」
と、イヌがつぶやくと、ネコがいいました。
「ねえ、あたしたち、新しい主人をさがしましょうか? おじいさんといっしょに、うえ死にするのもいやだし」
「この恩(おん)しらずめ! さんざんせわになっていながら、こまっているときにたすけないのか!」
 イヌは、おこって、ほえたてました。
「ご、ごめんなさーい」
 ネコは、背中をまるめて小さくなりました。
 その日の夕がた、二人はいままできたこともないほど遠くの、ある一けんやにつきました。
 イヌは、家の外がわをまわって、さがしました。
 ネコは、台所から中へもぐりこんで、さがしました。
 そして、イヌがものおきに近づいたときです。
「クンクン。・・・あっ、このにおいは!」
 あの、コハクの玉のにおいがしてきたのです。
 イヌはいそいで、ネコをよびました。
 二人はそっと、ものおきの中にしのびこみました。
 どうやらにおいは、ものおきのすみっこにある、ほこりをかぶった箱(はこ)からしてくるようです。
 きっと、この家の人は、コハクの玉にふしぎな力があることを知らないのでしょう。
「どうやって、この箱のふたをあけようか」
 二人はそうだんして、その家にいるネズミにたのみました。
 ネズミはその箱をいっしょうけんめいかじって、穴をあけてくれました。
 さっそくネコが、そこから手をつっこんでみました。
 ところが、ネコの手はみじかくて、コハクの玉までとどきません。
 それを見て、ネズミは小ネズミをよびました。
 小ネズミは穴の中にもぐりこんだかと思うと、コハクの玉をしっぽにまいてでてきました。
 イヌとネコは、大喜びです。
 二人はネズミたちに、なんどもなんどもお礼をいって、夜のあけるのもまたずに、川岸へもどってきました。
 ところが川の氷は、もうすっかりとけてしまい、にごった水がごうごうと、音をたてて流れています。
「こまったわねえ。あたしは、泳げないんです」
と、ネコはなきそうになりました。
「だいじょうぶ。きみは、このコハクの玉をしっかりくわえて、ぼくの背中にお乗り」
 イヌはこういって、ネコを背中に乗せました。
「いいかい。しっかりつかまっているんだよ。どんなことがあっても、口をあけてはいけないよ」
 イヌは川の中へはいって、泳ぎだしました。
 川の水はとてもつめたくて、イヌの足は、いまにもこおりそうでした。
 けれども、かわいそうなおじいさんがまっていることを思うと、イヌはがんばって泳ぎました。
 そして、ようやく岸辺に近づいたそのとき、
「ヤーイ。イヌの背中に、ネコが乗ってるぞう」
と、子どものさけぶ声がしました。
「どれ、どれ。へえ、おもしろいなあ」
 子どもたちが岸ベに集まってきて、みんなでゲラゲラ笑いだしました。
 それを見ると、ネコもなんだかおかしな気がしてきて、思わず「ククッ」と、笑いかけました。
「だめだっ。笑ってはいけない」
と、イヌがいいましたが、ネコはとうとうがまんができなくなって、「ププーッ」と、ふきだしてしまいました。
 それといっしょに、口にくわえていた玉が、ポロリと川の中へおちました。
 イヌはあわてて水の中にもぐって、玉をひろおうとしましたが、背中には泳げないネコがいるので、先にネコを岸にあげてから、イヌは川の底にしずんだコハクの玉をさがしました。
 でも、コハクの玉は見つかりません。
 ネコはイヌにおこられるのがこわくて、高い木の上にのぼってしまいました。
 イヌはなんどもなんども川にもぐって、コハクの玉をさがしましたが、もうヘトヘトになって動くことができません。
 するとそこへ、近くで魚をつっていた人が、イヌのそばへやってきました。
「どうした? はらがへってうごけないのか? ようし。こいつはさっきつったやつだが、小さいからおまえにやるよ」
と、いって、魚をなげてくれました。
 そのときイヌは、おじいさんのことを思いだしました。
「玉は見つからなかったけど、これを持っていってあげたら、おじいさんはきっと喜ぶだろう」
 そのころおじいさんは、お金がないので、何日ものあいだ何もたべていませんでした。
 イヌもネコも、新しい主人をさがしていってしまったのだろうと、思っていました。
 そこへ、イヌが魚をくわえて帰ってきたのです。
 おじいさんは、なみだを流して喜びました。
 そしてさっそく、魚を焼こうとして、魚のおなかをさきました。
 すると、コロリと小さなものがころがりでました。
 なにげなく手にとってみると、なんとそれは、あれほどさがしていたコハクの玉だったのです。
 コハクの玉のおかげで、おじいさんのくらしは、またらくになりました。
 イヌはいつもおじいさんのそばによりそって、いろいろとせわをしてあげました。
 けれどもネコはイヌにおこられるのがこわくて、けっして二人のそばへは近よらせませんでした。

おしまい

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