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2月24日の世界の昔話

橋の上の幸福

橋の上の幸福
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 むかしむかし、スウーピア川のほとりに、小さな家がありました。
 この家には、お父さんとお母さん、それに子どもが三人ですんでいました。
 お父さんは働き者でしたが、くらしはまずしいので、三人の子どもたちはいつもおなかをすかしていました。
 毎年春になるころには、この家ではパンを一切れも食べられなくなり、ゆでたジャガイモにヤギのミルクをかけて食べる日が何日も続くのです。
 ある年の春、そのジャガイモもなくなったため、お父さんはスウーピア川につりに出かけました。
「どうか、魚の一匹でもつれますように」
 神さまにおいのりしてつりを始めましたが、とうとう夜になっても一匹もつれません。
 お父さんは、トボトボと家に帰りました。
 家では、子どもたちとお母さんがねむっていました。
 テーブルの上には、ヤギのミルクがほんの少しお皿にのこっています。
「ああ、今夜もヤギのミルクだけだったのか。そのうちに、ヤギもやせてしまってミルクを出さなくなるだろう」
 お父さんは大きなため息をついて、ワラのベッドにもぐりこみました。
 そしてその夜、お父さんは夢を見ました。
『シチェチンの大橋の上で、幸福に出会うよ』
と、夢の中で誰かが言うのです。
 朝になり、お父さんは目をさましてその言葉をくり返しました。
「シチェチンの大橋の上で、幸福に出会うか。・・・いや、ただの夢じゃないか。本気にするなんてバカバカしい」
 お父さんはそう思って、その日もつりに出かけました。
 けれども魚は、夜になってもつれません。
 そしてまた、同じ夢を見たのです。
『シチェチンの大橋の上で、幸福に出会うよ』
 お父さんは、首をかしげました。
「二日も続けて同じ夢を見るなんて、もしかすると・・・。いや、腹がすきすぎて、どうかしてしまったのかもしれない」
 お父さんはそう思いながら、また川へつりに行きました。
 けれど、きのうと同じように魚はつれず、その夜また、同じ夢を見たのです。
『シチェチンの大橋の上で、幸福に出会うよ』
 朝になり、お父さんはお母さんに夢の話をしました。
「どうも、三日も続けて見るってことは、夢のおつげは神のおつげかもしれねえ。そんな気がしてきたんだ」
 すると、お母さんはまじめな顔でこう言いました。
「きっとそうですよ。ちょうどシチェチンでは市場もたつから、お前さん、ついでに働いておいでよ。パンの一斤(きん→重量の単位で、1斤は約600グラム)くらいかせげるかもしれないよ。だって、神さまのお告げだもの。パンの一斤くらいめぐんでくださるわよ」
「そうだな。そうしよう」
 お父さんは、さっそく出かけて行きました。
 途中で友だちの馬車(ばしゃ)に会ったので乗せてもらい、お父さんは三日後にシチェチンの大橋につきました。
 夢のお告げどおり、お父さんは大橋の上でジッと立って幸福を待ちました。
 でも、夕方になっても何も起こりません。
 今から市場へ行って仕事を探すには遅すぎますし、宿に泊まるお金など持っているはずはありません。
「しかたない。今夜は橋の下で眠るか」
 お父さんが冷たい風に身を震わせると、一人の老人が近づいて来ました。
「どうしたね。こんなところでふるえて」
「はい、それは・・・」
 お父さんは、三日続けて見た夢の話をしました。
 すると老人は手をたたいて笑い、こう言ったのです。
「そうか、そうか。実はな、わしも同じ夢を三日続けて見たんじゃよ。なんでもスウーピア川のほとりにまずしい五人家族の家があってな。その家の暖炉(だんろ)の下に大金がうめてあるからほれと言うんじゃ。しかし、誰がそんな夢の話を信じるかね」
 話を聞き終わると、お父さんは老人の手をとり、
「そうですね。私が馬鹿だった。すぐ帰ります」
と、別れをつげ、大橋から遠い家まで走って行きました。
 スウーピア川のほとりの五人家族のまずしい家と言ったら、お父さんの家しかありません。
 お父さんは走って走って、友だちの馬車に追いつき、三日後には家に帰りつきました。
「あら、あなた、おかえり。それで、パンは?」
と、出むかえるお母さんと子どもに返事もせず、お父さんはオノでいきなりレンガの暖炉をこわし始めました。
「あなた、何するの!」
 おどろいたお母さんがとめようとしましたが、暖炉をこわしたお父さんは、次に暖炉の下をほり始めたのです。
 お母さんも子どもたちも、お父さんがあまりにもしんけんなので、何も言わずにそばでジッと見ていました。
 そしてしばらくすると、お父さんがさけびました。
「あったぞ!」
 そして、土の中から大ナベを重たそうに引きあげると、それをテーブルに運んでふたをとりました。
「まあ!」
 大ナベの中には、金貨がたくさん入っていたのです。
「あなた! 夢のおつげはこれだったのね!」
「そうさ! これが、夢でおつげのあった幸福だったんだ」
 お父さんはその金貨で、パンとソーセージを山ほど買い、子どもたちとお母さんにおなかいっぱいに食べさせました。
 じつはこの金貨は、お父さんのひいじいさんがためたものでした。
 ひいじいさんは、この金貨でレストランを開こうと考えていたのです。
 そのことを思い出したお父さんは、のこった金貨でシチェチンの大橋にレストランを開きました。
 そのレストランはとても人気を集めて、家族はしあわせにくらしたのです。

おしまい

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