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2月28日の世界の昔話

ほら吹き男爵 体の部品を売りますほら吹き男爵 体の部品を売ります

ほら吹き男爵 体の部品を売ります
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 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは、『ほらふき男爵』とよばれておる。
 今日も、月世界での冒険話を聞かせてやろう。

 ある朝、わがはいたちは、月世界の都へ土産物を買いに出かけた。
 にぎやかな大通りまで来ると、一人の商人が、
「だんな、だんな」
と、声をかけてきた。
「だんな、すばらしい心臓の掘り出し物がありますよ」
「そんな物は、いらないよ」
 わがはいが、断ると、
「そうおっしゃらずに。お取りかえの費用は、サービスしますよ」
と、しつこく言ってくる。
「もし買いかえるお金がなかったら、修理はいかがで」
「うるさいな」
 わがはいが、その商人をふりきって歩き出すと、今度は違う商人が、
「だんな、目はいかがですか?」
と、寄ってきた。
「金、銀、ピンク、青、黄、茶、黒と、一週間毎日かえられるように、セットになっています」
「いらないね」
「それなら、お好みの色を、ばら売りにしてもいいですよ」
 そのうちに、耳を売るやつ、歯を売るやつ、口を売るやつ、鼻を売るやつなど、次から次へとやって来て、
「だんな、何か買ってくださいよ」
と、しつこい事。
「買わんと言ったら、ぜったいに買わん!」
 わがはいはとうとう、腹を立てて怒鳴りつけた。
「この月世界ではどうかしらんが、われわれ地球人は、せっかく神さまがお与えくださった体の部分を、かってに取り替えたりするような馬鹿な真似はせん!」
 これには商人たちも、一瞬、ぽかんとしたが、やがて仲間同士でひそひそ話を始めた。
 まあ、向こうではひそひそ話でも、なにしろ十メートルもある大男ぞろいだから、声も大きくてわがはいには筒抜けだ。
 そして、そのひそひそ話の内容が、
「ふーん、どうりでちっぽけだと思ったら、こいつら地球人か」
「地球人といえば頭もいいし、体も優秀に出来ているそうだ。このまま、帰すのはもったいないな」
「そうだ。捕まえて、バラバラにして売ろう。いい金になるぞ」
と、おそろしく、ぶっそうなひそひそ話だった。
 こんな連中に、捕まっては大変だ。
「それ、逃げろ!」
 わがはいたちは商人たちを突き飛ばして、港へ向かってかけだした。
「待て、地球人!」
「逃がしてたまるか!」
 商人たちが追いかけて来たが、わがはいたちは何とか自分たちの船に乗り込んだ。
 しかし、月世界に来る時はよかったものの、地球に帰る方法までは考えていなかった。
「どうすれば、よいのだ? ここには、地球まで吹き飛ばしてくれるような暴風はないし」
 その間にも商人たちは、どんどん近づいてくる。
 商人たちは数も多い上に体も大きいので、とても勝てる相手ではない。
「ああ、もう駄目だ。わがはいの冒険も、ここで終りか」
 わがはいたちが覚悟を決めたとたんに、王さまの家来たちが大根の武器を振りかざしながらかけつけて、商人たちを追い払ってくれたのだ。

「王さま、ありがとうございます。おかげで助かりました」
 わがはいたちは命を助けてもらったお礼にと、王さまに船をプレゼントした。
 まあ、帰る事の出来ない船を持っていても、仕方がないからな。
 えっ? それではどうやって、地球に帰ったかって?
 それはだな、あくる日の夕立ちの去ったあと、天からかかった見事なにじの架け橋が、月と地球をつないでくれたので、われわれはにじをすべり台代わりにして、ゆうゆうと地球に帰る事が出来たのだ。
 以上が、わがはいの月世界の冒険話だ。

 それにしても、思い出すのも恐ろしいが、もしあの商人たちにつかまっていたら、今頃わがはいたちはバラバラに・・・・。
 今日の教訓は『悪いやつにからまれたら、すぐに逃げろ』だ。

 では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。

おしまい

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