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7月6日の世界の昔話

天の川と七夕

天の川と七夕
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 むかしむかし、あるところに、一人の貧しい若者がいました。
 若者の仕事は、年を取った牛の世話です。
 そのため人々は、若者の事を牽牛(けんぎゅう)と呼びました。
 牽牛とは、牛引きという意味です。

 ある日の事、一匹の牛が主人の牽牛に言いました。
「ご主人さま、ちょっと南の川の方に行ってごらんなさい。美しい天女たちが水浴びをしていますよ。もし、天女をお嫁さんにしたかったら、天女の衣を一枚取り上げるのです」
「天女がお嫁さんか。いいな」
 そこで牽牛が南の川に行ってみると、確かに七人の天女たちが楽しそうに水浴びをしていました。
 牽牛はそっと岸に忍び寄ると、脱ぎ捨てられていた衣に手を伸ばしました。
 しかしそれに気がついた天女たちは、あわてて自分の衣をつかむと、ひらりひらりと天に舞い上がってしまったのです。
 それでも牽牛は、何とか一枚の衣を手に入れる事が出来ました。
 そして衣を取られて天に帰る事が出来なくなった一人の天女が、泣く泣く牽牛のお嫁さんになったのです。
 この天女の名前は、織姫(おりひめ)と言います。

 さて、それからほどなくして、牽牛に天女の事を教えてくれた牛が重い病気にかかりました。
 牛は、牽牛に言いました。
「わたしが死んだら、わたしの皮をはいで金の粉をつめてお持ちなさい。それと一緒に、この鼻輪もお持ちなさい。そうすれば、きっと助けになるでしょう」
 やがて牛が死ぬと、牽牛は言われた通りにしました。

 それから、三年の月日が流れました。
 その間に織姫は牽牛との間に、男の子と女の子を一人ずつ産みました。
 二人の子どもの母親になった織姫ですが、織姫は一日たりとも天の事を忘れた事はありません。
 織姫は牽牛の顔色を見ては、
「わたしの衣は、どこにあるのですか?」
と、何度も何度も尋ねました。
 しかし牽牛はいつも、
「さあ、どこにあるか忘れたよ」
と、言うばかりです。
 でも、とうとう織姫は酒に酔って機嫌の良い牽牛から、衣を隠してある場所を聞き出したのです。
「しまった!」
 ふと我に返った牽牛は、慌てて織姫を引き止めようとしたのですが、その時にはもう、織姫は衣をまとって天に舞い上がった後でした。
「頼む、行かないでくれ!」
 牽牛は二人の子どもを両わきにかかえると、織姫を追ってふわりと空に飛び上がりました。
 実は持っていた牛の皮の力で、牽牛は空を飛ぶ事が出来たのです。
 織姫は牽牛の姿を見ると、かんざしを抜いて天に長い線を書きました。
 すると線はみるみる広がって、流れの早い川になりました。
 そこで牽牛は牛の皮につめた金の粉を川にまいて、金の砂地の道を作りました。
 そして牽牛がなおも追いかけて行くと、織姫は、また線を引きました。
 今度の線は、大きな天の川になりました。
 金の粉を使い果たした牽牛には、もうどうする事も出来ません。
「ちくしょう!」
 怒った牽牛は、肩にかけた鼻輪を向こう岸に投げました。
 すると織女も、
「何をするのよ!」
と、機織りのおさを向こう岸に投げ返しました。
「二人とも、やめなさい」
 ふいに、まっ白いひげの神さまが現れて言いました。
「天の世界でけんかをするとは何事です! 二人とも、今すぐ仲直りをしなさい」
 神さまの命令では、仕方ありません。
 牽牛と織姫は、しぶしぶ言いました。
「では、わたしたちは一年に一度だけ、会う事にします」
 こうして二人は七の月の七の日に、天の川で会う約束をしたのです。
 それが、七月七日の七夕です。

 天の川を見ると、牽牛と織姫の星のそばには小さな星が二つ見えますが、それは夫婦喧嘩をした時に投げ合った、鼻輪とおさと言われています。

 福娘童話集では、他にも七夕に関する昔話があります。

中国の七夕伝説
七夕物語

日本の七夕伝説
犬飼七夕

香川県の七夕伝説
七夕の始まり

おしまい

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