きょうの世界昔話
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7月21日の世界の昔話

二本のロウソク
イラスト myi

二本のロウソク
アンデルセン童話 → アンデルセンについて

 むかしむかし、ある家のテーブルの上に、二本のロウソクが置かれていました。
 一本は蜜蝋(みつろう)と言って、とても高価で上等なロウソクでした。
 クルクルとねじった細身のデザインが、とってもおしゃれです。
 もう一本はクジラの油から作られた、安物のロウソクでした。
 上等なロウソクと違い、ただ丸めただけのおデブさんです。
 蜜蝋は、自慢げに言いました。
「ぼくは、ほかのロウソクよりも格好良くて、しかもずっと明るく光るんだ。だからきっと、銀のロウソク立てに置かれるよ」
 蜜蝋の言葉に、安物のロウソクがため息をつきました。
「いいなあ。ぼくも君みたいに、客間でパーティーに来る人たちを照らしてあげたいよ。でも、僕が行くところは、せいぜい台所さ」
 その時、この家の奥さまがやって来て、安物のロウソクを手に取ると台所に持って行きました。

二本のロウソク

(やっぱり)
 安物のロウソクは、がっかりです。
 台所には、カゴをかかえた小さな男の子が立っていました。
 そのかごの中にはたくさんのジャガイモと、いくつかリンゴが入っています。
 奥さまが、男の子に言いました。

二本のロウソク

「さあ、このロウソクも持って行きなさい。あなたのお母さんは夜遅くまでお仕事をなさるでしょうから、これが役に立ちますよ」
 するとそれを聞いた、この家の小さな女の子が言いました。
「あら、わたしだって夜遅くまで起きているわ。
 だって今夜は、ダンスパーティーがあるんですもの。
 わたし、大きな赤いリボンをつけてもらうのよ」
 安物のロウソクは、お星さまのようにきらきらと目を輝かす女の子を見て、
「わあ。何て可愛い子だろう」
と、思いました。
「でも、ぼくはもう二度と、この女の子には会えない。
 蜜蝋くんは、きっと女の子とダンスパーティーを楽しむのだろうけど、ぼくは貧しい家にもらわれていくのだから」

 男の子はカゴにロウソクを入れると、みすぼらしい小さな家に帰りました。

二本のロウソク

 この家のお父さんはもう死んでしまって、お母さんがぬい物をしながら三人の子どもを育てていました。
 男の子が、カゴのロウソクをお母さんに差し出すと、

二本のロウソク

「まあ、いいロウソクをいただいて」
と、お母さんはとても喜んで、安物のロウソクに火をつけました。
 その時、この家の一番下の女の子が入ってきました。
 その子はにこにこしながら、お兄さんとお姉さんのところに行くと、

二本のロウソク

「あのね、問題だよ。今夜のごちそうは、なーんだ? えへへ。それはね、あったかいジャガイモだよ」
 女の子はうれしくてたまらないというように、可愛い目をキラキラと輝かせました。
 安物のロウソクは、その女の子を見てこう思いました。
「ああ、さっき見た、お金持ちの女の子と同じ目だ。
 むこうは豪華なパーティーで、こっちはジャガイモのごちそうだけど、どっちの女の子も同じように幸せなんだなあ」

 やがて、晩ご飯になりました。

二本のロウソク

「とてもおいしい、ジャガイモだね」
「それに、リンゴまであるんだよ」
「神さま、おめぐみありがとうございます」

二本のロウソク

 にぎやかな食事が終わると、子どもたちはベッドに入って、お母さんからおやすみのキス、してもらいました。
「ああ、楽しい夜だったなあ」

二本のロウソク

 安物のロウソクは、この家族と一緒に幸せな時間を過ごせて、とても満足でした。
「もう、蜜蝋くんがうらやましくないや。
 みんなそれぞれに幸福があって、自分が幸福と感じられれば、それは幸福な事なんだ。
 だからぼくは、本当に幸福だ。

二本のロウソク

 ・・・あっ、お母さんがぬい物を始めるぞ。よーし、ぼくも頑張らなくちゃ」

おしまい

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