8月31日の世界の昔話
仙女
ペローの童話 → 詳細
むかしむかし、お母さんと二人の娘が、村はずれのまずしい家にひっそりとくらしていました。
お母さんは、自分ににている姉さんばかりかわいがり、下の妹にばかり、家の用事や力仕事をさせていました。
でも妹は、ちっとも嫌(いや)な顔をせず、洗濯(せんたく)も料理も掃除(そうじ)も、歌を歌いながら楽しくやっていました。
森へキノコやたきぎとりに行けば、ウサギやリスが集まってきて手伝ってくれるので、ちっともつらくはありません。
畑仕事の時も、妹が来ると小鳥たちが飛んで来て、きれいな声でさえずってくれました。
さて、ある寒い寒い日のことです。
お母さんは妹に井戸(いど)へ水をくみに行くように言いつけました。
妹はおけにひしゃくをいれて村の井戸へ行きました。
すると、井戸のそばにボロボロの洋服を着た、女の人が立っています
髪の毛は、一目で何日もあらってないことがわかります。
顔も汚れていて、ほっぺたはやせこけていました
女の人は、妹が水くみをはじめると声をかけてきました。
「すみませんが、お水を一杯、飲ませてもらえませんか?」
「ええ、いいですよ」
妹は、ニッコリ笑ってうなずきました。
そして、おけに浮かんだゴミを全部とり、きれいな水だけをひしゃくにくんでわたしました。
「さあ、何杯でもどうぞ」
女の人は喜んで、おいしそうにゴクゴクとひしゃくの水を飲みほしました。
それから妹にひしゃくを返すと、こう言いました。
「あなたは、なんて優しい娘なのでしょう。これから先、あなたが話せば、バラの花と宝石が口から飛び出すようにしてあげましょう」
「まあ、ありがとう」
と、妹が思わず言うと、ピンク色のバラの花と真珠(しんじゅ)が、ほんとうにポロリと口から飛び出しました。
「すてき。ありがとうございます」
妹は、ポロリポロリとこぼれるバラの花と宝石を集めて、エプロンのポケットにしまうと、女の人にお礼を言って家に帰りました。
家に帰った妹は、さっそくエプロンからバラの花と宝石を見せて、お母さんと姉さんに、井戸で会った女の人のことを話しました。
そう話しているあいだにも、赤や白のバラの花とルビーやダイヤモンドが、ポロポロとこぼれました。
お母さんも姉さんもビックリ、あわててその宝石をひろいました。
そして姉さんは、
「あたしも行ってくる」
と、おけとひしゃくを持って、井戸へ走って行きました。
井戸のそばには、さっきのみすぼらしい女の人が立っていて、姉さんに言いました。
「すみませんが、お水を一杯飲ませていただけませんか?」
ところが姉さんは、あんまりあわてていたので、妹が『みすぼらしい女の人が立っていて』という話を、よく聞いていなかったのです。
花や宝石を出してくれる魔法を使う仙女(せんにょ)は、きっと美しい貴婦人(きふじん)のような女の人にちがいないと、姉さんはかってに思いこんでいたのでした。
だから、みすぼらしい女の人にそう言われたとたん、
「お前なんかに用はない! あっちへお行き!」
と、ひしゃくで水をすくって、顔にひっかけました。
みすぼらしい女の人は、ぬれた髪と顔で姉さんをにらみながら言いました。
「あなたは、なんて意地悪な娘でしょう。これから先、あなたが何か話したら、口から毛虫や毒(どく)虫が飛び出すようにしてあげます」
そしてそのとたん、女の人は消えてしまいました。
「ちょっと、ちょっと待っておくれよ!」
姉さんはあわてて言いました。
すると、口からほんとうに毛虫や毒虫が、ポロポロと飛び出してきたのです。
姉さんは泣きながら家に帰り、お母さんに言いつけました。
そのあいだも、毛虫や毒虫が口から飛び出て、部屋中をゴソゴソ歩きまわります。
お母さんは、カンカンにおこり、
「姉さんにウソを教えたね! みすぼらしい女が仙女だったんじゃないか! ウソつきは、出てお行き!」
と、妹を追い出しました。
妹は、ションボリと森へ行きました。
そこへ、狩(か)りをしにお城の王子さまが、馬に乗ってとおりかかりました。
「ないたりして、どうしたのですか?」
王子さまは、妹をよび止めました。
妹は泣きながら、お母さんの家を出てきたことを話しました、
そう話す妹の口から、バラの花と宝石がポロポロとこぼれます。
王子さまは、妹のかわいらしさと、話すたびに花や宝石が口から飛び出すことに感激(かんげき)して、お城に連れて行くことにしました。
妹はやさしくて働き者でしたから、王子さまのお父さんの王さまにも大変気にいられ、王子さまと結婚してお妃(きさき)さまになったのです。
おしまい
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