9月21日の世界の昔話
魔法のボウシ
デンマークの昔話
むかしむかし、ある年のクリスマスの日の事、まずしいヒツジ飼いの若者が、丘の上からボンヤリと村をながめていました。
「おやっ? あれは、何だろう?」
村のまん中にある、ひときわ大きな農家に、次から次へと人が入っていきます。
みんな、とびきりおめかししています。
「わかった。クリスマスパーティーがあるんだな。おいらも見に行きたいなあ」
しばらくすると、農家から、
♪チリリン、チリリン、チリリン
と、楽しそうな鐘(かね)の音が聞こえてきました。
ごちそうが、出来たという合図です。
とたんに、地面の底から声がわきあがりました。
「ボウシはどこだ? ボウシはどこだ?」
(いったい、何の事だ?)
ヒツジ飼いは、ためしにどなってみました。
「おーい、おいらのボウシもあるかい?」
すると、誰かが答えました。
「あるよ。おいらのとっつあんのをかぶりなよ」
声といっしょに、おんぼろボウシが目の前に飛び出しました。
ヒツジ飼いがこわごわかぶってみると、目の前に小人がウジャウジャと現れました。
♪ほうい ほうい ごちそうだぞーい
小人たちは歌いながら、農家に向かってかけだしました。
ヒツジ飼いも、そのあとを追いかけました。
途中で何人も知り合いに出会ったので、ヒツジ飼いはていねいにあいさつをしました。
「こんにちは、いい天気ですね」
ところが声をかけられた人は目を丸くして、キョロキョロとあたりを見回すばかりです。
「変だなあ? おいらが、見えないのかな?」
首をひねっているうちに、ヒツジ飼いは気がつきました。
「そうか。こいつは、魔法のボウシだ。かぶると、姿が見えなくなるんだ。いいぞ、いいぞ。これでパーティーに、もぐりこめるぞー」
ヒツジ飼いはうれしくなって、スキップしながら農家に入っていきました。
テーブルには、ごちそうがいっぱいです。
ところがお客さんが、さあ食べようと手をのばすと、お皿は空っぽです。
「あれ? おかしいな? さっきまで、確かにあったのに」
「ああっ、フォークからソーセージが消えた!」
お客は、大騒ぎです。
実はごちそうは全部、小人たちが横取りしているのです。
ヒツジ飼いも、たらふく食べました。
「そうだ。お母さんにも持っていってやろう」
ヒツジ飼いはポケットに、食べ物やワインのビンをつめこんで家に帰りました。
お母さんも、大喜びです。
「ああ、おいしかった。でもどうせなら、あしたの分もあればもっといいのに」
ヒツジ飼いはなるほどと思い、農家と家をせっせと行き来して、たくさんのごちそうを運びました。
お日さまが沈むころ、大広間でダンスがはじまりました。
みんな、楽しそうにおどっています。
「おいらも、おどりたいなあ」
ヒツジ飼いが前に出て見ていると、かわいい女の子たちがクルクル回りながら近づいてきました。
女の子たちが音楽に合わせて回るたびに、スカートのすそがフワリと広がります。
ヒツジ飼いがそのかわいらしいダンスに見とれていると、女の子のスカートのすそがヒツジ飼いのボウシに当たり、ボウシが頭から落ちました。
すると突然、ヒツジ飼いが姿を現したので、まわりの人はビックリ。
「わっ。お前、どこから来たんだ!?」
「食べ物を、ポケットに入れているぞ! さては、食べ物ドロボウはお前だな!? それ、やっつけろ!」
みんなはヒツジ飼いを取り巻くと、ポカポカとなぐりつけました。
「助けてえー! ごめんなさーい!」
ヒツジ飼いはポケットの食べ物をほうり出して、命からがら逃げ出しました。
そしてそのとき魔法のボウシをなくしてしまい、ヒツジ飼いがどんなにさがしても二度と見つからなかったそうです。
おしまい
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