11月16日の世界の昔話
一まいのはね
アンデルセン童話 → 詳細
むかしむかしのある日。
お日さまが西にしずんで、日がくれました。
トリ小屋のニワトリは、みんなとまり木にとまりました。
そして、目をつむりました。
「あしたの朝まで、おやすみなさい」
でも、すぐにはねむれません。
一羽のメンドリが、くちばしではねをつついていました。
このメンドリは、毎日、きちんとタマゴをうむ、とてもいいメンドリでした。
ただ、ときどきおもしろいことをいっては、みんなをわらわせるくせがありました。
はねをつついているうち、白いはねが一まい、ポロリと下におちました。
「あら、はねが一まいおちたわ」
と、メンドリはいいました。
「でもいいわ。わたしははねがおちると、それだけ体がスラリとして、きれいになるんですもの」
メンドリは、みんなをわらわせようとおもっていったのです。
けれど、ほかのトリたちはあそびつかれて、みんなスヤスヤとねむってしまっていました。
ところが、ちかくの木のえだに、目玉をクルクルさせたフクロウがとまっていました。
夜になってくらくなればなるほど、目がよく見えてくるフクロウです。
「わたしはききましたよ。この耳で。耳がおちてしまわないうちは、できるだけたくさんきいておかなければなりませんからね」
フクロウは、ハト小屋のハトに話しかけました。
「おききなさい。トリ小屋のメンドリさんは、きれいになりたいといって、自分のはねをぬいたんだそうですよ」
「クックー、クックー」
ハトは、となりのアヒルに話しました。
「アヒルさん、アヒルさん。なんとおどろいたことではありませんか。ニワトリさんが、きれいになるきょうそうをして、はねをみんなむしりとったんですって」
「ガア、ガア、ガア」
アヒルはおどろいてなきました。
「たいへんなことをするもんだ。はねをむしってしまっては、かぜをひいて、ねつをだすにきまっている」
アヒル小屋ののき下に、コウモリがとまっていました。
コウモリは、この話しをきいてビックリしました。
「ひどい話しだ。こんな話しをだまっているわけにはいかない。みんなにしらせなくっちゃ」
ヒラヒラヒラと、コウモリは月夜の空へとんでいきました。
あくる朝になりました。
「チュン、チュン、チュン」
朝はやくから、ニワトリ小屋のまえで、スズメがやかましくさわぎました。
ニワトリたちは、へんにおもって、
「もしもし、スズメさん。どうかしたのですか?」
「これはおどろいた。チュン、チュン、チュン」
と、スズメはなきました。
「どうしたどころではありませんよ。メンドリさんがはねをぬいて、五羽もなくなったということではありませんか」
「あら、まあ。それはおきのどくね。いったいどうしたというのでしょう。そんなにはねをぬいて、五羽もなくなるなんて。おどろきましたわ」
と、一羽のメンドリがいいました。
なんとそのメンドリは、一番はじめにはねをおとしたメンドリだったではありませんか。
たった一まいはねをおとしたことが、おしまいにはメンドリが五羽もなくなったと、とちゅうから話しがひどくかわってしまったのです。
「どこのメンドリさんでしょうね?」
「ここのメンドリさんではないのですか?」
「いいえ、ここではありませんよ」
「おかしいなあ、どこだろう?」
「ほんとに、どこでしょうねえ?」
「おかしいなあ?」
風がふいて、ゆうべメンドリがおとした一まいのはねを、ヒラヒラとどこかへもっていきました。
おしまい
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