福娘童話集 小学生童話 5年生
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5年生のイソップ童話

1人息子と絵にかいたライオン

1人息子と絵にかいたライオン

 気の小さい年取った父親に、1人息子がいました。
 息子はたいそう勇敢(ゆうかん)で、猟(りょう)が大好きでした。
 あるとき父親は、息子がライオンの爪(つめ)で引きさかれて死ぬ夢(ゆめ)を見ました。
「もしこの夢(ゆめ)が正夢(まさゆめ)で、本当にこうなったらたいへんだ」
と、心配した父親は、家の高いところにりっぱな部屋をつくって、そこに息子をとじこめました。
 部屋の壁(かべ)には、いろいろな動物の絵がかいてあって、その中にはライオンの絵もありました。
 これは、息子がたいくつしないようにと、父親が絵かきにかかせたものですが、息子はちっともよろこばず、かえってイライラするばかりでした。
 ある日、息子はライオンの絵に向かって、
「いまいましいけだものめ。ぼくがこんなろうやにとじこめられたのは、おまえと、おやじが見た変な夢(ゆめ)のせいだぞ。ようし、思い知らせてやる」
 こう言いながら、息子はライオンの目をつぶしてしまおうとして、壁(かべ)に殴(なぐ)りかかりました。
 ところが、ちょうどそこにくぎがつきでていたので、手をけがしてしまい、そのけががもとで息子は死んでしまいました。
 ライオンといっても、絵にかいたライオンですが、それでも息子は本当にライオンに殺されてしまったのです。
 あと、息子は死ぬ前に、こういったそうです。
「どうせなら、本物のライオンとたたかって、死にたかった」

 自分の運命には、自分で立ち向かわなければなりません。
 たとえばいじめっ子がいても、部屋に閉(と)じこもるといったごまかしではなく、正面から勇敢(ゆうかん)に立ち向かっていくべきだと、この話はおしえています。

おしまい

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