福娘童話集 小学生童話 5年生
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5年生の世界昔話

すずの兵隊

すずの兵隊
アンデルセン童話 → アンデルセン童話のせつめい

 ある小さな男の子が、誕生日(たんじょうび)に、すずの兵隊のおもちゃをもらいました。
 1本のスプーンを溶(と)かしなおして作ったもので、全部で25人そろっていましたが、そのうちの1人だけは足が1本しかなかったのです。
 この兵隊が一番さいごに作られたため、すずが足りなくなってしまったのです。
 それでもこの兵隊は、一本足のまま、しっかり立っていました。
 男の子は、ほかに紙でできたお城(しろ)のおもちゃももらいました。
 そのお城(しろ)の入り口には、ひとりのおどり子が片足(かたあし)を思いきりあげておどっています。
「ああ、あのおどり子も一本足だ。ぼくのお嫁(よめ)さんにちょうどいい」
 1本足の兵隊は、おどり子に一目惚(ぼ)れして、その夜はおもちゃ箱の中で、おどり子から目をはなさずに過(す)ごしました。
 ところがあくる朝、窓辺(まどべ)におかれた一本足の兵隊は、すきま風でまどがあいたひょうしに、4階から下の道に落ちてしまったのです。
 それを通りかかったワンパクこぞうが見つけて、新聞紙で作った船に乗せてみぞに流しました。
「どこへ行くんだろう。はやく、あのおどり子の所にもどりたいな」
 はやい波にゆすぶられているうちに、新聞紙の船が破(やぶ)れて、すずの兵隊は水の中へ沈(しず)んでしまいました。
 それをエサとかんちがいしたあわてん坊(ぼう)の魚が、すずの兵隊を飲み込(のみこ)んでしまいました。
 やがてその魚は漁師(りょうし)につられて、それを買ったある家のお手伝いさんが、魚のお腹(なか)を包丁で切り開いてビックリ。
「あら、この兵隊はたしか」
 なんと、魚が買われていった家は、もとの持ち主の男の子の家だったのです。
 テーブルには、あのお城(しろ)ものっていて、おどり子はあいかわらず足を高く上げていました。
「やあ、ようやく帰ってきた。ただいま、おどり子さん」
 一本足の兵隊が、じっとおどり子を見つめていると、持ち主の男の子が一本足の兵隊をつかんで言いました。
「一本足の兵隊なんて、もういらないや」
 そして、燃(も)えさかるストーブの中にほうりこんでしまったのです。
 兵隊は自分の身体が溶(と)けていくのを感じましたが、どうすることも出来ません。
「さよなら、おどり子さん。いつまでもお元気で」
 そのとき、ふいにまどが開いて風がふきこみ、紙のおどり子がヒラヒラと舞い上(まいあ)がると、ストーブの中の兵隊のところへ飛び込(とびこ)んできました。
「やあ、きてくれたんだね。ありがとう、花嫁(はなよめ)さん」
 やがて、紙のおどり子は燃え尽(もえつ)き、すずの兵隊もすっかり溶(と)けてしまって、ハート型の小さなかたまりになりました。

おしまい

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