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長ーい文字
イラスト たつよ   提供 らくがきの日常

一休のくそとなれ
一休さんのとんち話 → 一休さんについて

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スタヂオせんむ

 むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。

 一休さんがまだ小さい頃、始めて修行をしていたお寺の和尚(おしょう)さんは、ひどいけちん坊でした。

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 おまけにお寺では食べてはいけない、塩ザケをおみそ汁の中へ煮込んで、
「ああ、うまい。体が温まるのう」
と、平気で食べているのです。
 当然、一休さんたち小僧には、一切れも分けてはくれません。
 しかも塩ザケを食べる時の、和尚さんの言葉がとても気どっていました。
「これなる、塩ザケよ。
 そなたは、枯れ木と同じ。
 いくら助けたいと思うても、今さら生きて海を泳ぐ事など出来ぬ。
 よって、このわしに食べられ、やすらかに極楽(ごくらく)へまいられよ」
 それを聞いた一休さんは、
「ふん、自分で料理しておきながら、何が極楽だ」

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と、他の小僧たちと腹を立てていました。

 ある日の事。
 一休さんは朝のお務めをすませると、魚屋へ走って行って大きなコイを一匹買って来ました。

 そしてお寺へ戻ると、まな板と包丁を取り出して、なベをかまどにかけました。
 それを見た和尚さんは、ビックリして言いました。
「一休! お前、そのコイをどうするつもりぞ!」

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「はい。
 このコイを、食べます。
 この前、和尚さんに教わったお経を唱えますので、聞いて下さい」
「お前、正気か!」
「はい、正気でございますとも」

長ーい文字

 一休さんは少しもあわてず、コイをまな板へ乗せてお経を唱えました。
「これなる、生きゴイよ。

長ーい文字

 そなたは、この一休に食べられて、くそとなれ、くそとなれ」
 唱え終わると一休さんはコイを切り身にして、なベに放り込みました。
「むむっ。・・・『くそとなれ』か」

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 和尚さんは、今まで塩ザケに向かって『極楽へまいられよ』と言っていたのが、恥ずかしくなりました。
『くそとなれ、くそとなれ』
と、本心を言った小さな一休さんに、してやられたと思ったのです。
(こいつはきっと、大物になるぞ。わしの所ではなく、もっと良い和尚の所にあずけるとするか)
「それでは、頂きます」

長ーい文字

 一休さんは和尚さんの顔色をうかがう事なく、他の小僧たちと一緒にコイこくをおいしそうに食べました。

おしまい

※ コイこくとは、コイを輪ぎりにして煮込んだおみそ汁です。

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