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福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読
キツネの仕返し
むかしむかし、村人から家族の病気回復のお祈りを頼まれた山伏(やまぶし)が村へ出かけて行く途中、川の草むらで一匹のキツネが昼寝をしているのに出会いました。
「よく寝ておるな。・・・よし、おどかしてやれ」
山伏はキツネの耳に、ほらがいを当てて、
「ブオーッ!」
と、一吹きしました。
「コンコーン!」
驚いたキツネは飛び上がったはずみで、川に転げ落ちてしまいました。
それを見た山伏は、お腹を抱えて大笑いです。
「ワハハハハッ。これはゆかい」
さて、山伏は間もなく、お祈りを頼まれた家に到着しました。
すると主人が、落ち込んだ顔で出て来て言いました。
「残念ながら、おいでいただくのが一足遅く、病気の女房が死んでしまいました。人を呼んで来る間、留守をお願いいたします」
「いや、それは」
「では、頼みましたよ。女房は奥の部屋です。せめて女房が成仏出来る様に、お祈りの一つもあげてください」
主人はそう言うと、どこかへ行ってしまいました。
「何とも、嫌な事を頼まれたものだ。だが、仕方がない」
山伏が奥の部屋に行ってみると、部屋の真ん中にびょうぶが置かれていました。
そのびょうぶの向こうには死んだ女房が寝ているのですが、山伏は気味が悪くてびょうぶの向こうに行く気がしません。
「早く、帰って来ないかな」
山伏が主人の帰りを待っていると、突然、びょうぶがガタガタと動き出しました。
「わあ、わあ、わあ」
山伏が情けない声をあげながらビックリしていると、びょうぶがガタンと倒れて、その向こうから死んだはずの女房が髪を振り乱しながら近寄ってきました。
「あなたが、もっと早く来ていれば、わたしは死なずにすんだのに。・・・うらみますよ」
恐ろしさに腰を抜かした山伏は、後ずさりしながら死んだ女房に謝りました。
「すまん、おれが悪かった。謝る。謝るから、もう近寄るな」
そして、どんどん後ずさりしていった山伏は、急に床がなくなるのを感じて、そのまま川の中へドブーン! と、落ちてしまいました。
「あれ? ここはどこだ?」
辺りを見回すと、山伏が落ちたのはキツネをおどかした川の中です。
さっきまでいた家は、どこにもありません。
山伏は、ようやく気づきました。
「そうか、おれはさっきほらがいでおどかしたキツネに、仕返しをされたのか」
その頃、山伏にお祈りを頼んでいた家の人たちが、山伏が来るのが遅いので迎えに出てきました。
そして川の中にいた山伏を見つけて、山伏から事情を聞いた家の人たちは、
「キツネに化かされる様な山伏では、お祈りをしてもらっても無駄だ」
と、言って、山伏に頼んでいたお祈りを断ったそうです。
おしまい
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