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  イラスト たつよ   提供 らくがきの日常
 
 けものの皮は叩かれる
 一休さんのとんち話 → 一休さんについて
  むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 お寺の檀家(だんか)に、碁(ご)が大好きなご隠居(いんきょ)がいるのですが、
 
   近頃そのご隠居が毎晩お寺にやって来て、和尚(おしょう)さんと夜遅くまで碁をうっていました。朝の早い小僧たちは、ねむくてかないません。
 
  「何とかして、ご隠居が来ない様にしないと」 
   一休さんは色々と考えましたが、下手ないたずらをすると和尚さんにしかられるので、なかなかよい方法が浮かびません。
 さて、この頃はとても寒いせいか、ご隠居は、けものの皮で出来たそでなしをはおっています。
 
  それを見た一休さんに、ある名案が浮かびました。(そうだ、いい事がある)
 
 次の日、一休さんはお寺の門に、こんな張り紙をしました。
 
  《けものの皮は、入るべからず》ご隠居は、この張り紙を見て、
 「なに?
 けものの皮は、入るべからずだと。
 けものの皮とは、わしの事か。
 
   ・・・ははーん、これは一休のやつが、碁のじゃまをするつもりで書いたのだな。・・・さて、どうするか?」
 しばらく考えたご隠居は、すぐに平気な顔で門をくぐりました。
 
  すると一休さんが、「ご隠居さま。
 門の張り紙が、よめないのですか?
 動物を殺してつくるけものの皮は、お断りします。
 どうか、お帰りください」
 と、通せんぼをしました。
 すると、ご隠居が言いました。
 「確かに、この服は動物を殺したけものの皮でつくった物だ。
 
  しかし、このお寺には、けものの皮をはった、たいこが置いてあるではないか。たいこが良いのなら、わしもよいであろう。
 どうだ」
 ご隠居は一休さんをやり込めたつもりでしたが、一休さんの方が一枚上手です。
 「その通り。
 しかしお寺のたいこは、罪(つみ)つぐないに、毎日ばちでドンドン叩かれています。
 
   ですからご隠居さまも、同じ様に叩かねばなりません。それっ!」
 一休さんは、ご隠居にたいこのバチを振り上げました。
 「わっ、わかった! わしの負けじゃ!」
 
   ご隠居は頭を抱えると、あわてて家へと逃げ帰りました。 おしまい  
 
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