| 福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読
 
 
  イラスト たつよ   提供 らくがきの日常
 
 長ーい文字
 一休さんのとんち話 → 一休さんについて
  むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
 ある日の事、隣村のお寺へ出かけた和尚(おしょう)さんが、なにやら浮かぬ顔で帰って来ました。
 
          そして和尚さんは、庭を掃除していた一休さんを見るなり言いました。 
         「おお、一休。わしは今日、隣村の和尚とえらい約束をしてしもうた。
 頭の良いお前に、知恵(ちえ)を貸してほしいのじゃ」
 「はい、わたしでお役に立つ事でしたら」
 「そうか、いつもすまんのう。
 実は、隣村の和尚と話をしていて、お前の事が話に出た。
 わしが、
 『一休は知恵者で、何でも知っておるし、何でも出来る』
 
         と、言うたら、あの和尚のやつ、『それなら知恵者の一休に、日本一長い字を書いてもらおう』
 と、言いおった。
 『そんな事くらい、一休なら簡単じゃ』
 と、わしも引き受けたんじゃが。
 ・・・一休、お前に出来るかのう?」
 それを聞いて、一休さんは頭をポリポリとかきました。
 「はあ。・・・仕方ありませんね。日本一長い字、明日までに何とか考えてみます」
 
 次の朝、一休さんは和尚さんのところへ行くと、ニコニコしながら言いました。
 
         「和尚さん。日本一長い字を書きますから、隣村のお寺へお使いを出して、あちらからうちの寺まで紙をしきつめる様に言ってください。それと、竹ぼうきで作った筆と、たらいにいっぱいの墨(すみ)を用意してください」
 「おお、出来るのか! よし、わかった!」
 
 さて、日本一長い字を書く用意が出来ると、一休さんは隣村のお寺に出かけました。
 隣村の和尚さんは、一休さんに言いました。
 「まったく、こんなにたくさんの紙を用意させおって。
 書けるもんなら、書いてみろ。
 ただし、もし書けなかったら、紙代を弁償(べんしょう)してもらうぞ」
 「ご心配なく。それでは、わたしについてきてください」
 一休さんは竹ぼうきで作った太い筆に墨をたっぷりふくませると、つううううーっと、紙の上にまっすぐな線を走らせました。
 その線はどこまでもどこまでもまっすぐ続き、一休さんたちのお寺でようやく止まりました。
 隣村の和尚さんは、一休さんに怖い顔で言いました。
 
         「なんじゃあ、これは!?これは、ただの線ではないか!
 こんな物は、字とは言えん。
 さあ、約束通り紙代を弁償してもらおうか」
 すると一休さんはニッコリ笑い、今まで引いてきた線の最後をピンと右にはねて言いました。
 「はい。これで日本一長い字が書けました」
 「字だと? これのどこが・・・、あっ!」
 
         「そうです。これは、ひらがなの『し』でございます」こうして見事に日本一長い字を書いた一休さんのとんちは、ますます評判となりました。
 おしまい  
 
 |