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          福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読 
         
        
       
キツネとタニシ 
      
      
       むかしむかし、足の速いのがじまんのキツネがいました。 
 あるとき、このキツネがタニシにいいました。 
「ちょっと都(みやこ)まで、いってきたんじゃ」 
 キツネは足のおそいタニシを、いつもバカにしています。 
「都までは遠いから、足のおそいタニシなんかには、ぜったいにいけんところじゃな」 
 タニシはキツネがじまんばかりしているので、ちょっとからかってやろうと思いました。 
「キツネさん、そんなに足が速いのなら、わたしと都まで競走(きょうそう)しませんか?」 
「ギャハハハハハハー! タニシがどうやって、あんな遠くまでいけるんじゃい」 
「キツネさんにいけるなら、わたしにだっていけます。だいたいキツネさんは、わたしよりはやく歩けるのですか?」 
「なに! わしのほうが速いにきまっとる!」 
 はじめはバカにしていたキツネも、だんだんおこってきました。 
「よーし、そんなにいうのなら、わしとどっちが早く都へつくか、競走じゃ!」 
 こうして、キツネとタニシの競走がはじまりました。 
「よーい、ドン!」 
 キツネは、ドンドン歩きはじめました。 
 ふりかえってみると、タニシはもう見えません。 
「まったく、わしが勝つにきまっているのに。ほら、もう見えなくなっちまった。バカバカしい」 
 キツネはバカらしくなって、ちょいとひと休みです。 
 すると、タニシの声がしました。 
「おや? もう疲れたのかい、キツネさん。それではお先にいきますよ」 
 キツネはビックリ。 
 遠くヘおいてきたと思ったタニシが、すぐそばにいるではありませんか。 
「おかしい。おいつかれるはずは、ないんじゃが・・・」 
 キツネはふしぎに思いながらも、また歩きはじめました。 
 そのうちに、山に夕日がしずみはじめました。 
 キツネはまたまた、バカバカしくなってきました。 
「タニシなんかと早歩き競走したって、なんにもならんわ。わしが勝つにきまってるんだから。それに、本当のこというと、都なんかいったこともないし。・・・だいぶ遠いんじゃろな」 
 キツネは立ち止まって、おしっこをしようとしました。 
 すると目の前に、タニシがいます。 
「キツネさん、早くしないとおくれますよ。わたしについておいで」 
「そんなバカな!」 
 キツネは信じられません。 
 でも、タニシはそこにいます。 
 キツネは気持ちわるくなって、むちゅうで走りだしました。 
 本当は、タニシはキツネのしっぽにつかまって、やってきたのでした。 
 そうとは知らないキツネは、負けたくないので、ひっしで走りつづけました。 
 そのうちに、疲れてフラフラです。 
 するとまた、タニシの声が。 
「キツネさん、そんなことでは、おいこしてしまいますよ」 
 おどろいたキツネは、また、むちゅうで走りつづけました。 
 そして、都への道しるべまでくると、とうとうへたりこんで、 
「やっとついた。タニシに勝ったぞ! ふうっ、疲れた・・・。そうとも、キツネがタニシに負けるはずはないんじゃ」 
 ホッとしたキツネの耳に、また、タニシの声が。 
「キツネさん!」 
 キツネはキョロキョロと、あたりを見まわしました。 
「ここですよ、キツネさん」 
 タニシが、都への道しるべの上にいます。 
「おそいな。いまついたところかい? わたしはとっくについて、都見物をすませた後ですよ」 
「そ、そんなばかな・・・」 
 それからというもの、キツネは足が速いことをじまんしなくなったそうです。 
      おしまい 
         
         
        
       
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