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福娘童話集 > お話し きかせてね > 江戸小話の朗読
この子にも百文
天気が大変良いので、若者たちが帆かけ舟(ほかけぶね)に乗って沖(おき)ヘ出ました。
追い風のおかげで、舟は気持ち良く走ります。
みんなが大喜びで遊んでいると、突然、大ダコが現れました。
大ダコは二メートルもある長い腕で舟にしがみつくと、中ヘ入ろうとします。
みんなは驚いて大ダコを追い出そうと考えましたが、ここには殴りつける棒も投げつける石もありません。
大ダコはゆっくりと、舟にあがってきます。
「えーい、しかたがない。命にはかえられぬわ」
一人の男が財布から百文銭(→三千円ほど)を取り出すと、ねらいをさだめて大ダコの顔に投げつけました。
スコーン!
百文銭は大ダコの頭にうまく当たって、大ダコはそのまま海の中ヘ戻っていきました。
「よかった、よかった。誰にもけががなくて、なによりだ」
若者たちが喜んでいると、またさっきの大ダコが現れました。
今度は、小さいタコを連れています。
若者たちがびっくりしていると、大ダコは子どものタコを舟の方ヘさしあげて言いました。
「どうかこの子にも、百文やってください」
おしまい
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