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福娘童話集 > お話し きかせてね > 江戸小話の朗読
泥棒の泥棒
一仕事を終えた泥棒が、隠れ家に帰ってきました。
「今日は、うまくいったぞ」
「おれも、すっかり腕前があがったわい」
めいめいがじまん話などしていますと、親分が言いました。
「これから、分け前を決めるぞ。それぞれ、盗んだ物をここに出すんだ」
「へい!」
泥棒たちは、盗んできた品物を残らず親分の前に出しました。
ところが、親分がちょっと目をはなしたすきに、さっきまで確かにあった立派な財布がなくなっているのです。
誰かが、素早く取ったのです。
親分は、子分の泥棒たちに怒りました。
「さては、この中に泥棒がいるな! 泥棒の物を泥棒するとは、とんでもないやつだ! 誰が取ったか、正直に言え!」
泥棒たちは、顔を見合わせると、
「あっしじゃ、ありません」
「おれも、ちがいます」
「わたしじゃ、ないです」
「おいらは、知らないです」
と、みんなが口々に言います。
すると親分は、ますます怒って言いました。
「うそをつくな! うそをつくのは、泥棒の始まりだぞ!」
おしまい
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