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福娘童話集 > お話し きかせてね > 江戸小話の朗読
釣りの先生
《つり、おしえます》
と、書かれたかんばんを見つけた男が、頼み込みました。
「どうかわたしを、弟子にしていただけますか?」
「それはかまわんが、その前に見どころのあるなしを調べねばならん。
この釣りざおを持って、二階へあがって糸をおろしなさい」
男が言われた通りにすると、先生はおりてきた糸の先をちょっと引っ張りました。
「さあ、これは何のひきか、おわかりかな?」
「わかるとも、ハゼだ」
「残念じゃが、キスにござる。では、これはどうじゃな?」
「セイゴ(→スズキの子)かな」
「いや、クロダイの子のチンチンでござる。では、これならおわかりじゃろ」
「えーと、アイナメのようだが」
「またもはずれ、カレイにござるよ。
あなたは、よくよく感がにぶい。
さあ今度こそ、当てなさいよ。
これは、子どもにもわかる答えじゃから」
先生は言うがはやいか、釣り糸の先を力一杯引っ張りました。
男はふいをくらって、二階からまっさかさまです。
「あたたたたたっ!」
ひたいのこぶを押さえながら、男は泣きっ面で聞きました。
「今のはかなりの大物でしたが、ブリですか? カツオですか?」
「残念ですが、あなたには見込みがありませんね。
カッパの引きもわからんようでは、とうてい無理でござる。
釣りは、あきらめなさい」
おしまい
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