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福娘童話集 > お話し きかせてね > 江戸小話の朗読
安全水泳法
今もむかしも、夏の娯楽(ごらく→あそび)といえば水泳ですが、むかしは海水浴場やプールなどはなく、川や池で泳いでいたため、水の事故が大変多くありました。
そのため夏場になると、泳ぎ自慢が教える水泳教室がはやったそうです。
近頃、町の表通りに『安全水泳指南所(あんぜんすいえいしなんじょ)』という水泳教室が出来たと、若者の間で評判になりました。
二、三人が、寄り集まると、
「最近は水の事故が多いからな。どうだい? 安全水泳とやらを、習いに行こうじゃないか」
と、いう事になりました。
そこで『安全水泳指南所』に来てみますと、けっこうな人数の若者が集まっています。
若者たちがふんどし一丁で並んでいると、よく日焼けをした水泳の師匠が現れました。
「よし、そろっておるな。ではこれより、安全水泳を指南しよう」
若者たちは、どういうふうに習うのかと興味津々です。
すると師匠は筆にすみをつけて、みんなの足首のあたりに横すじをつけました。
「あの、先生。この印は一体?」
一人の若者が尋ねると、水泳の師匠が答えました。
「これが安全水泳の秘訣じゃ。これより深い水に入らなければ、おぼれる心配なし」
おしまい
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