|  |  | 福娘童話集 > お話し きかせてね > 江戸小話の朗読
 
 
 
 金魚   町内の子どもたちが、おけに入っている金魚(きんぎょ)の泳ぐのを見て、ワイワイさわいでおりました。「こっち、こっちだ!」
 「あれっ、また藻(も→みずくさ)の中にかくれてしまったぞ!」
 「後ろからつついて、出してやれよ」
 するとそこへ、近所の男がやって来て言いました。
 「どれどれ、どんな金魚を買ってきたのだね?」
 男がのぞき込むと、おけの外で金魚が一匹、口をパクパクさせながら苦しそうにあえいでいます。
 男は驚いて、子どもたちに聞きました。
 「おいおい、どうしてこんな所に、金魚をおいたままにしておくのだ?」
 すると子どもたちは、
 「その金魚はね、苦しそうに横になって泳いでいたの。だからちょっとの間、外で寝かせて休ませているんだよ」
 と、言ったそうです。
 おしまい   
 
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