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福娘童話集 > お話し きかせてね > ゲスト参加の朗読
十二味のとうがらし
旅の男が、縁日でにぎわうお寺の前を通りかかると、とうがらし売りが声をかけました。
「お客さん、世にも珍しい、十二味とうがらしはいかがですか?」
「なに? 十二味とうがらしだと? 七味とうがらしなら、どこでも売っているが、十二味とは珍しいな。よし、土産に一袋、作ってくれ」
「へい、ではさっそく、お作りいたしましょう。まず、『赤とうがらし』に、『アサの実』に、そして『青のり』に、『ちんぴ(みかんの皮を干して、粉にしたもの)』に、『さんしょ』を入れて。しまいに、『ケシ』と『すりゴマ』をよく混ぜ合わせてと、へい、おまちどおさん」
「おいおい。それでは、どこにでもある七味じゃないか。『赤とうがらし』、『アサの実』、『青のり』、『ちんぴ』、『さんしょ』、『ケシ』、『すりゴマ』。やっぱり、七味ではないか。いったいどこが、十二味とうがらしだ。・・・さては、でたらめぬかしたな!」
旅の男が、くってかかりました。
ところが、とうがらし売りは、ニヤリと笑い。
「今日は、ごらんの人出で、だいぶほこりがたっています。したがって、七味とうがらしに少々のごみ(五味)も入っておりましょう。七味と五味で、十二味とうがらしでございます」
おしまい
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