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カッパのくれた宝物

カッパのくれた宝物
秋田県の民話秋田県情報

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朗読 : ぬけさくのいちねん草紙

 むかしむかし、あるところに、とてもなまけ者の息子がいました。
 毎日仕事もしないで遊んでばかりいるので、怒ったお父さんがお金とやせたウマを渡して言いました。
「これをやるから、さっさと家を出て行け!」
 家を追い出された息子は仕方なく、ウマに乗って旅に出ました。

 しばらく行くと、子どもたちが一羽のトンビをつかまえて、たたいたり、けったりしていじめていました。
 それを見た息子は、トンビがかわいそうになって言いました。
「わしに、トンビをゆずってくれないか? その代わり、お金をやるから」
「うん、いいよ」
 息子はお父さんからもらったお金を全部子どもたちにあげて、子どもたちからトンビを受け取りました。
 息子はトンビを抱いて旅を続けると、やがて大きな川に出ました。
「まあ、何とか渡れるだろう」
 息子がウマに乗ったまま川の中を進んでいると、川のまん中あたりでウマが急に暴れ出したのです。
「うわぁ、どうしたんだ?! ウマよ、とにかく川から出るんだ!」
 息子は何とか、ウマを岸にあげました。
 そして馬をおりて調べると、なんとウマの尻尾にカッパがしがみついていたのです。
 息子はカッパをつかまえると、カッパに言いました。
「どうして、ウマの尻尾につかまるんだ?! もう少しで、川へ落ちるところだったじゃないか!」
 するとカッパは、手を合わせてあやまりました。
「かんべんしてくれ。おら、ウマのお尻が好きだから、つい手を出したんだ。でも、もう二度としないから、かんべんしてくれ」
「いや、かんべん出来ない。頭の皿をたたきわってやる」
「と、とんでもない! 皿をわられたら、おら、死んでしまうだ。おらの宝物を持って来るから、それでかんべんしてくれ」
「よし、それなら助けてやろう」
「すまねえ。さあ、川へもどって宝物を取って来るから、おらの手をはなしてくれ」
 息子がカッパをつかまえていた手をはなしてやると、カッパは大喜びで川まで走って行きました。
 そして息子にあかんべーをして、こう言いました。
「やーい、だまされおって。そう簡単に、カッパの宝物を渡すものか」
 すると息子は、抱いていたトンビを見せて言いました。
「カッパよ。このトンビはな、火の中だって水の中だって入って行って、お前の頭の皿をわる事が出来るんだぞ」
 それはを聞いたカッパは、びっくりです。
 カッパは急に態度を変えて、息子に言いました。
「いっ、いやじゃなあ。さっきのは、ただのじょうだんじゃ。何しろカッパは、約束を守る事で有名なんじゃ」
 カッパは川に飛び込むと、しばらくして古い木づちを持ってきました。
「お待たせ。これがカッパの宝物だ」
「何だこりゃ?」
「知らねえのか? これはうちでの小づちといって、ふるとほしい物が出てくるぞ」
「本当か?」
 息子はためしに、木づちをふってみました。
 すると木づちから、豆粒が一つ転がり出ました。
「何だ? 豆粒が一つしか出ないじゃないか! わしをバカにするつもりか! トンビに皿をわらせるぞ!」
「と、とんでもない! だまってふれば豆粒しか出ないが、欲しい物の名前を言ってふれば何だって出るんだ」
 カッパはそう言うと、川の底へもぐってしまいました。
「よし、欲しい物の名前を言えばいいんだな」
 息子は、お腹が空いていたので、
「ぼたもち出ろ」
と、言って、木づちをふりました。
 すると本当に、目の前にぼたもちが現れたのです。
「なるほど。こいつはすごい!」
 息子はぼたもちを食べて腹ごしらえをすると、ウマに乗って家へ帰りました。

 家に帰ると、お父さんがこわい顔で言いました。
「なにしに、帰ってきた!」
 すると息子は木づちをふって、お金やお米を出してみせました。
 するとお父さんは、とても喜んで、
「もう、どこへも行くな」
と、言ったのです。

 カッパにもらった木づちのおかげで、お父さんと息子とトンビは、いつまでも仲良く暮らしたという事です。

おしまい

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